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京都市在住のフリーランスライター兼編集者


遠山:社員やスタッフが合宿に参加して、自らの体を動かしたり知恵を絞ったりすることで、会社の売り上げには関係のない「トリエンナーレに作品を出す」という非常に抽象的なことを理解していった感じですね。

杉田:社員の皆さんが楽しんだ作品だからこそ、鑑賞者にもその楽しさが届くんでしょうね。

遠山:芸術祭って、子どもから高齢者までさまざまな年齢層が来られるし、そもそも「現代アートとは何?」という状態なんだけど、皆さんすごく笑顔で、楽しんでくれました。

会期終了後には社内で振り返りの会議をしたんですが、ひとつ至極真っ当な意見があった。作品を直接見ていない、ある店舗の社員からで、「そういうことをやる時間とお金があるなら、アルバイトの時給をあげてほしい」と。

それを聞いて、私は「要するにその社員には伝わらなかったということだな。だったら来年はもっとやろう」と決めました(笑)。それで翌年(2016年)、香川県の豊島に体験型アート作品の「檸檬ホテル」をつくったんです。

杉田:感服です。


築90年の古民家を改装した「檸檬ホテル」。1日1組、2名から5名が宿泊できる(現在は休館中)

遠山:これもまた不思議な作品で、コンセプトは「2人でカップルになりなさい。相手がいない場合は、現れるまでしばし待つ。」。カップルになったら、1台のイヤホンガイドを取って2人でヘッドホンを装着し、流れてくる音声に従って行動してもらうんです。そして最後には「ほほ檸檬」をしてもらう。

杉田:ほほ檸檬?

遠山:そう。2人で頬にレモンを挟んで、写メを自撮りして、「#cheekylemon」というハッシュタグでインスタグラムにあげていただくんです(笑)。これもある朝思いついて、会社で「ほほ檸檬しなさいってどうかな?」と言ったら「意味わからないです」って。

でも、2016年のオープンからたくさんのカップルが利用してくれてね。知人の女性も配偶者と出かけたらしく、普段は全然スキンシップがなかったのに、最後はちゃんと「ほほ檸檬」をしたっていう嬉しい報告がありました。

杉田:微笑ましい。ホテルという箱を舞台に、人を動かすというアイデアが素晴らしいです。


「ほほ檸檬」にチャレンジした@meganeandmiwa さんご夫妻(左)、菅野照子さんとご友人(右)

取材・構成=堀 香織 撮影=山本マオ

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