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石川:日本はデザイン後進国と言われることもあるのですが、実は国内にもデザイン経営ができている企業がたくさんあるんじゃないかと思うんです。

永井:デザイン経営を実践している企業をあげてくださいとよくいわれるのですが、そんなに沢山は出てこないです。どういうことでしょう。

石川:例えば100から200年以上続いているような老舗企業。こんなに長く続いているのは、ユーザーの期待に応えたプロダクトを作るときに、自社にとっての「あり」「なし」の軸をしっかりと持ってきたからなのではないかと思うのです。

永井:日本の「のれん」文化を継ぐ企業は、たしかに美しいビジネスをしている気がしますね。安易に利益拡大に走らず、自分たちの目の前にいる顧客を大事にしながら誠実に続けている。

石川:近江商人の三方良しという哲学も象徴的です。ユーザーだけでなく、ステークホルダーを強く意識していますよね。

永井:老舗企業というのは長い経営の歴史のなかで、当然淘汰もあったわけです。その過程の中で、お客さんに選別されながら確かな価値を持っている企業だけが残って来たということだと思います。三方良しも、関係性の幅を広げることが、サステイナブルなビジネスにつながるという哲学です。

石川:今のビジネスはとにかく新しいことをやることが評価されるという風潮がありますが、これって実はもったいないこと。デザインは、新しいことを始めたりイメージを変えるという部分で価値を発揮すると思われがちですが、継続するという視点でも担える役割があるのではないかと思っています。

社会の転換期にデザインがあった




永井:大切な視点ですね。ただ、変化を目的にしなくても、継続するために変えなければいけないことがあるのも事実です。クライアントに創業450年という企業があるのですが、そこでも何を変えて何を変えないのかは、深く議論しました。つまり、価値を守るためのデザインということでしょうか。19世紀に起こった「アーツ・アンド・クラフツ運動」ってあるでしょう。

石川:デザイナーのウィリアム・モリスが中心になった運動ですね。美しいもの以外は部屋に置かないというクオリティー・オブ・ライフの提唱を行いました。

永井:そう。近代デザインの起源といわれているこの運動も、工業化という大きな社会の変革がきっかけだった。中世の職人が持っていた創造性が、産業革命によって生まれた労働者と資本家の分断で失われたこと。労働者が工場で機械のように働くことに対して、それで良いのかという問いかけでもあったわけです。

写真=小田駿一 構成=水口万里、若尾真実

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