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左から、三女アン、次女ジャネット、エスター、長女スーザン(Taylor Hill/Getty Images)

──自分の弱みや足りないところもあえてさらけ出すことが大切とのことですが、それが「信頼関係」を築くこととどう関係があるのでしょうか。

パロアルト高校でジャーナリズムを担当する駆け出し教師だった頃のことです。グループワークを行い、活発におしゃべりをする私の授業スタイルを校長先生から咎められ、クビになりかけたことがありました。でも私はそれがどうしても正しいと思えなくて。

そんな自分の胸のうちを、正直に生徒たちに伝えました。すると彼らは私の悩みを理解し、校長先生が来た時だけピタッと静かにしてくれました。弱みを打ち明けたからこそ、生徒は私に協力してくれたのです。

──信頼する姿勢が強い協力関係を生むということですか?

そうです。私は恥ずかしげもなく、いつも自分の弱さをさらけ出していました。助けが必要な時は「助けて」と正直に言いました。そして常に、新しいことに挑戦しようという意欲を持ち続けていました。人生には「自分にはできる」というマインドセットがとても大切だと思います。巡ってきたチャンスに「挑戦しよう」と決めたら、私たちは何だってできるのです。

──“TRICK”を企業の人材育成にも応用されているそうですが、職場に導入するためには、どうすればよいでしょうか。

リモートワークが増えて、どうやって職場のメンバーと信頼関係をつくればよいかという悩みは多く寄せられます。ですが、家で働いている人たちを管理するというのは実際には不可能です。けれど、だからといって相手を疑い、尊重せず、感謝もしなかったら、かえってマイクロマネジメントが必要な事態になります。

私が一番にアドバイスするのは“Trust”(信頼)です。信頼したら、自分にだけ責任が押し付けられるのはないかと恐れる人がいますが、プロダクトにフォーカスし、時間の使い方は個々人に任せればいいのです。メンバーのことを信頼し、尊重し、感謝の気持ちをきちんと伝えれば、彼らはとても熱心に働いてくれるでしょう。日本でもこうした考えを広めることが最初の第一歩だと思います。

──三女のアンは「イエール大学を卒業してベビーシッターになる」と言い出したそうですが、それはなぜ?

私の娘たちは大学を卒業した時点で、誰一人として仕事が決まっていませんでした。長女のスーザンも卒業後はしばらく家に戻っていましたが、「何をすればいいかわからないからインドに行く」と言い出しました。何のあてもなくインドに渡り、現地で仕事を見つけて1年以上滞在しました。

私は娘たちの成績や進路の選択に口を出したことは一度もありません。幸い、3人とも悪い成績ではありませんでしたが、全てがAだったわけではありません。人生は一直線ではありません。頂上にたどり着くには、ぐるぐると回り道があって当然なのです。

インタビュー=関 美和 文=加藤紀子

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