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東京都が仕掛けるものづくりベンチャー育成事業「Tokyo Startup BEAM」。フェーズごとに最適な資金調達先や実証実験パートナーを見つけることができる環境の整備により、ハードウェアの設計・開発段階のベンチャーから量産による事業化を模索するベンチャーまでが、短期間でアイデアを形にし、成長していけるエコシステムの構築を目指す。

今回、42件の応募(2020年6月15日~同年7月31日まで提案公募)から採択された12の企業には、いずれもディープテック(科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み)を有するという共通点がある。

東京都がもつリソースや好条件を活かして急成長する12のものづくりベンチャーに迫り、それぞれのディープテックが描き出す革新的な近未来図を紹介する。



バイオ・ヘルスケア領域の可能性──誰もがいきいきと暮らすために


2030年には65歳以上の人口が総人口の3割を超えると予測されている日本。超高齢化社会の様相は濃くなるばかりだ。若者から高齢者まで、そして身体の状況にかかわらず、すべての人が元気に活躍し続けられる社会を築いていくことは、増大する社会保障費への対応においても重要となる。いま、誰もが積極的に社会に参加し、多様なライフスタイルを実現するために、人間の能力拡張技術やロボティクスに対する注目は高まりをみせている。

介護業界が抱える慢性的な人手不足という課題に対し、介助サービスロボットの社会実装に寄せられる期待は大きい。株式会社 Piezo Sonicは、電力ゼロでも姿勢を保持できるピエゾソニックモータに加え、そのモータを活用したロボット・IoTデバイスを開発、販売している。同社では、Tokyo Startup BEAMにおいて、介助やサポートロボットに適した中空型ピエゾソニックモータと高トルク型ピエゾソニックモータの機能試作に取り組み、量産化・事業化に向けた実証実験も行う予定だ。

また、脳卒中は高齢者が罹りやすい病気のひとつ。日本における発症者は年間30万人に上り、その25%には、重度の運動障害が残るとされる。Connect株式会社は、脳卒中発症後の重度麻痺患者を取り巻く課題に着目し、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI :Brain-machine Interface)技術を活用した医療機器の研究・開発を行っている。

同社が提供するのは、失った運動機能を代替・補完する機械ではなく、新しい治療の実現である。脳と麻痺部位をつなぐ神経回路を再構築することで、患者はロボットを外した状態でも自分の意志で麻痺部位を再び動かすことが可能となる。試作機で得られた臨床現場の声をもとに改良を進め、Tokyo Startup BEAMでは製品化・量産試作のフェーズに進む。

「人生100年時代」において注目される健康寿命。日本人の平均寿命も約80歳にまで伸びたが、健康寿命は70歳程度に留まっている。「100歳まで歩ける社会」の実現を目指す株式会社ジャパンヘルスケアは、現役医師によるスタートアップ。

環境改善型予防医学の視点から、足腰の痛みや高齢者の要介護の原因にもなる「足や歩き方の歪み」に着目し、足の写真をもとに3Dプリンタでつくるオーダーメイドのインソール「HOCOH(ホコウ)」を開発した。Tokyo Startup BEAMでは、「HOCOH」の製作手法を活用したサンダルの試作を進める。

人類から「孤独」をなくすことを企業の最終目的とする株式会社オリィ研究所は、その実現手段として、半自立走行型分身ロボットOriHime-Dの開発に成功している。

OriHime-Dには、何らかの問題によって就労を含めた社会的な活躍機会が制限されることで「孤独」にある人が、積極的に社会とリンクするための最良のツールになる可能性がある。しかし、現時点での量産化にはコストの面で需要との隔たりがある。Tokyo Startup BEAMで、OriHime-Dのコンセプトを引き継いだ量産モデル「OriHimeポーター」の試作開発を開始する。

また、細胞レベルの精密診断やオーダーメイド医療、バイオ生産などの領域に対し、株式会社CYBOは細胞から得られる網羅的な情報に基づき、高速イメージング×AIで細胞を高速で仕分け・選別し、細胞の状態のモニタリングや診断法の開発などを手助けする画像活性セルソーター装置「ENMA(画像活性セルソーター)」を開発した。 がん免疫細胞療法や再生医療、創薬、バイオ燃料開発など、多くの分野からの活用ニーズを背景に、Tokyo Startup BEAMで量産化を推し進め、世界各国への事業展開を目指す。

宇宙産業に参入するスタートアップ──無限の可能性に挑む


測位衛星による位置情報や通信・放送分野における人工衛星の利用、自然災害における被害状況把握のための地球観測。地球上の社会経済活動を支えるため、これまでにさまざまな宇宙利用が進められてきたが、近年のデジタルテクノロジーの進化によって精度は向上し、新しい利用領域の開拓が急速に拡大している。こうした宇宙産業のステージで新たなハードウェアの開発を進めるスタートアップが、日本でもみられる。

株式会社天の技は、超小型人工衛星が数多く打ち上げられていく未来を見据え、正確な観測に必要となる人工衛星の姿勢制御コンポーネントの研究開発を進めている。Tokyo Startup BEAMでは、超小型人工衛星向けの姿勢制御部品であるスタートラッカーの、より一層の小型化・低コスト化を図るために量産試作を開始する。

衛星に搭載するレーザー光源や、超小型人工衛星(CubeSat)の開発・運用を鋭意推進する株式会社ASTROFLASHは、東京大学航空宇宙工学専攻の研究室から生まれた大学発のスタートアップ。地上から明るく見える人工衛星を利用して、夜空に文字や図などを描くことによる宇宙エンターテインメントや宇宙広告の事業展開を計画している。

2022年中に初号機の打ち上げを予定。将来的には初号機で実証した技術を用いて多数機での衛星運用を行い、新たな宇宙利用の実現を果たし、日本と世界の宇宙産業を拡大・発展させていく。

一次産業や環境領域に変革を──持続可能な社会へ


農業をはじめとした一次産業の現場では、SDGsの観点を念頭に持続可能な食品産業を育てていくための取り組みが行われている。しかし、安定した食糧供給を目指すには課題がある。担い手の高齢化や後継者不足、経験や勘に依存した作業など、テクノロジーの浸透していない領域が数多く残っていることだ。

養豚業もそのひとつ。養豚農家の人手不足解消と作業効率化をミッションに掲げる株式会社Eco-Porkは、養豚業界に特化した経営支援システムである「Porker」を開発。IoTの実装により一次産業のアップデートを図る。Tokyo Startup BEAMでは、給餌改善に高いニーズのある養豚農家に向け、給餌量データの取得が可能な養豚用スマート給餌管理機の機能試作に取り組む。

この40年で日本の漁獲高は3分の1にまで減少した。ほかの一次産業と同様に高齢化や後継者不在といった問題を抱える漁業の持続可能性は、危機的な状況を迎えているといえる。SDGsの複数の目標にリンクする課題の解決に向けて、株式会社ARKは漁業者や農業者の所得向上および世界の食糧問題解決への貢献を模索。環境への負荷を低減させた、安定的な食料生産手法の開発に邁進している。Tokyo Startup BEAMでは、オフグリッドでゼロエミッションを実現した陸上養殖システムの開発に取り組む。

また、一次産業に目を向けたとき、環境保全も最大のテーマとなる。世界中で生産されるプラスチックは、年間で約4億トン。自然環境の中で容易に分解されないプラスチックゴミは、海洋流出によって生態系を破壊する。粒子サイズまで細かくなったマイクロプラスチックは、食物連鎖を経て人間の体にも多大なる影響を与えている。

こうした地球規模の課題解決に向けて、アイ-コンポロジー株式会社は、これまでに海洋生分解性プラスチック複合材を開発してきた。Tokyo Startup BEAMでは、その使用環境や特性上、高い生分解性が必要となる漁具や浮き玉の製品化を目指すとともに、新たな技術開発が求められる各種成形方法についてもイノベーションを起こしていく。

DXのその先に見える未来──パラダイムシフトへ


DXとは、ビッグデータやAIなどのデジタル技術を用いて、製品やビジネスモデル、サービスを変容させることであり、新型コロナウイルスによるパンデミックは、その必要性を際立たせた。「2025年の壁」へのカウントダウンが始まったいま、DXの取り組みの有無に企業の存続がかかっているといっても過言ではない。DXを補完する事業を行う日本のスタートアップに注目が集まる。

コロナ禍の影響をもっとも受けた業界のひとつは、飲食業である。いま、慢性的な人手不足や対面接客の必要性が問われたことで、ロボットとの協調や機械化・自動化など、飲食業界のDXが加速している。

飲食店の調理に特化したロボットサービスの提供を行うコネクテッドロボティクス株式会社は、Tokyo Startup BEAMにおいて、非接触で商品の販売・提供を完結するソフトクリームロボットの量産体制を構築。WITHコロナ時代の飲食店へのバックアップ体制を整える。

また、現在、あらゆる分野でDXが進行している。ものづくりの現場も例外ではない。紀元前から同じ手法を継承してきたハンダ付けは、IHリフロー技術によって、これまで不可能だったPET・布・紙など低耐熱性基材への実装が可能となった。

株式会社ワンダーフューチャーコーポレーションは、自社で開発したこの技術をベースに「固い、重い、曲がらないデジタル・サイネージ」を「柔らかい、軽い、曲がるフレキシブル・デジタル・サイネージ(FDS)」に変容させた。同社はTokyo Startup BEAMにおいて、可能性の広がったFDSを市場展開するための量産体制を構築する。

エコシステムの構築を目指して進むBEAM


ものづくりベンチャーとプログラムパートナー、そして東京都。それぞれが強固なパートナーシップを築き、同じ目的に向かってスピード感をもって進むさまに、粒子の集団の並進であるBEAMをイメージし、エコシステムの構築を目指して名付けられたTokyo Startup BEAM。

東京から発せられた12本のBEAMを皮切りにして、日本のものづくりをベースにしたスタートアップ・エコシステムの構築が始まる。




── Tokyo Startup BEAMプロジェクト ──
「BEAM」は、Build up、Ecosystem、Accelerator、Monozukuriの頭文字。
本記事は、東京都の特設サイトからの転載であり、製造業にまつわる技術と経営の知識を兼ね備えた青木もプロジェクトを応援している。

本事業に関する詳細は特設サイトから

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