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日米スポーツビジネス最前線


子供の幸福を願う親の気持ちはかけがえのないものだが、それが常に正しいわけではない。日本でも加熱する受験勉強による様々な弊害が指摘されているように、米国でもこうした行き過ぎたユーススポーツの早期専門化に伴うリスクが指摘されている。

小さいころから競技を絞ると、運動動作が固定され、体がそれ以外の動きをしなくなるので、結果としてアスリートとしての総合的な運動能力の開発が遅れ、怪我のリスクが高まるとの指摘がある。ウィスコンシン大学の研究者によれば、1年間に8カ月以上同じスポーツをする競技者は、そうでない者に比べて高い確率で練習過多に起因する怪我をすることが分かっている。

特にバスケで多いのは足首の怪我だ。NBAでも、戦線離脱の原因となる怪我のトップは足首の怪我で、今シーズンでは約25%のNBA選手が足首の怪我を経験しているという。


Photo by Doug Pensinger/Getty Images

また、本来楽しいはずのスポーツが“仕事”になってしまった結果、バーンアウト(燃え尽き症候群)や場合によってはうつ病などの精神疾患にかかるリスクも高まることが知られている。このような症状は、以前は激しいプレッシャーにさらされるトッププロ選手に見られるものであったが、それが若年化している。

こうしたユーススポーツの早期専門化に伴う備品やコーチング、遠征費用の負担、カウンセリングなどの医療周辺サービスの利用などにより、所得の低い家庭の子供がスポーツから締め出される状況が起こっている。Sports & Fitness Industry Association(米スポーツ&フィットネス産業協会)によると、世帯所得が10万ドル(約1000万円)を超える家庭では、41%の子供が何らかのチームスポーツに参加しているのに対し、2万5000ドル(約250万円)以下の家庭では19%しかいないとの調査結果が出ている。拡大を続けるユーススポーツのビジネス化にはさまざまな弊害が存在または想定される

NBA Launchpadが掲げる1. ~3. の課題は、こうした米国におけるユーススポーツの変容と無縁ではないものと思われる。「山を高くするにはすそ野を広げろ」とは、スポーツの選手育成でよく言われることだが、バスケットボール界の“すそ野”で起こっている本質的な課題を解決することで、長期的な競技レベルのアップを目指すNBAの姿は多くのスポーツ組織が参考にすべきものではないかと思う。

また、課題4.の「レフリーの訓練・育成のレベルアップ」について、NBAには仕事で訪問する機会も多いのだが、特に選手育成や試合のレベルアップの話を聞くとレフリーの役割を大変重視していることを肌で感じる。試合のレベルアップ=選手のレベルアップと考えがちだが、NBAでは試合を「選手とレフリーが創り出す商品」と捉えているように感じる。

どんなに選手がコート上で素晴らしいパフォーマンスを披露しても、レフリーがそれを生かす笛が吹けなければ試合の魅力は半減してしまう。選手のパフォーマンスの生殺与奪権を握っているという意味では、レフリーの技量は選手と同等以上に重要と言っても差し支えないだろう。

NBA Launchpadでは、8月31日までオンラインで参加申請を受け付けている。我こそはと思う方は、是非応募してみてはいかがだろうか?

文=鈴木友也

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