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成功体験にとらわれない「課題創造力」を生む対話|トヨタ自動車


モビリティカンパニーへの大変革のかじを切った、トヨタ自動車。日本そして世界を代表する大企業の社内で、次の100年に向けて、新しい働き方と意識改革に挑む「場」がある。トヨタ大手町だ。同施設を率いる、先進技術開発カンパニーAI統括室長の竹内康臣、AI統括室技範の中村剛志は、その変革の過程で「聴く」ことを重視することで、課題創造力の向上と行動変容をもたらし、新しいプロダクトを生むリーダーの育成につながると期待する。

「AIやブロックチェーンといった新技術に関して、トヨタはどう対峙していくのか。トヨタの思いである『すべての人に幸せを届ける』を実現するために何ができるか、そして、社会の課題にどう貢献できるか。そう考えると、我々には『課題を創造する力』と、相手のことを考える『YOU視点』が求められる。新たな分野だからこそ、従来の成功体験にとらわれず、社内外の方やメンバーから『聴く』ことがより重要になる」と竹内は話す。

竹内と中村のチームにおける新技術開発の取り組みは、従来のトヨタの組織、人材育成、ルールや慣行を改善していくことへのチャレンジでもある。そのために、ベンチャー企業のように、企画から事業化までを一通り、小回りで実行に移す取り組みを行っている。


トヨタ自動車先進技術開発カンパニーAI統括室長竹内康臣(右)と同社AI統括室技範中村剛志(左)

その成功事例の一つが、ウェザーニューズ社と連携した道路冠水をリアルタイムに検知する実証実験だ。ドライバーの安全や車両被害を削減する取り組みで、ゲリラ豪雨に対して、同社の気象データとトヨタのコネクテッドカーの車両データを活用して、冠水検知のAIアルゴリズムを開発。プロジェクトメンバーが、災害課題や開発者の意見を深く聴き、方向性を合わせることで、短期開発を実現したという。

中村は組織設計という観点から次のように話す。「知恵が勝負を左右する。知恵を日々、うまく出し合えることが必要条件だ。そのためには、組織のなかで、上下関係や部署関係なく風通しよく、議論できる雰囲気が重要。現在は、リーダー、マネジャークラスで社外1on1を通して『聴く』ことの研修をしているが、ここを起点に彼らの聴く力が向上し、上司部下や部署を超えたコミュニケーションの改善を通して、社内の雰囲気が変わり始めている。『聴く』が連鎖するかたちで、社外の人たちともうまく連携が進められている」

竹内と中村がその先に目論むのは、組織設計や人材育成、ルールづくりといった「大手町モデル」の本社への輸出だ。

これまで自動車産業でつくり上げたプロフェッショナルな組織を基盤に、新たな風を吹かせることで、双方のよさがあるハイブリッド組織へと全社的に進化することを目指している。

「新技術分野でも、トヨタの技術、強みをもって課題解決していく実行力が大事になるだろう。トヨタの強みをもった人間が、新たな時代に変革していくためにはどうしたらいいか、その起爆剤になる組織になりたい。それが僕らの挑戦だ」(竹内)

文=加藤藍子、揚原安紗佳、フォーブス ジャパン編集部

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