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坪田:ニュートンの「我々は巨人の肩に乗っている」という言葉が好きなのですが、読書がこれに近いと思っています。僕は、読書とは本から教養や学問を学んでいくことだと捉えています。偉人たちは元々才能があるすごい人と思われがちですが、子どもの時から本との出会いを経て、過去の先人たちである巨人の肩に乗り、遠くを見渡してきた人たちなんですよね。



堀内:それから、若い頃の読書、という文脈でお話をすると、私は大学1年の時、エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を読んで強い衝撃を受けました。

フロムは、近代資本主義によって可能になった自由な経済活動の結果生じた「自分の行動への責任」が人に孤独感と無力感をも生ぜしめた、と言っています。そしてそこから、当時世界で最も民主的といわれたワイマール憲法を持っていたドイツでヒトラーのような独裁者が生まれた理由や、現代の独裁者が古代や中世の独裁者と決定的に異なる点(大衆の自発的な支持に立脚していること)を指摘したのです。

私は若い頃から立花隆さんが好きで、ともかく彼みたいに知識を蓄えて行けば正解にたどり着く、まっすぐ真実に向かって行ける、人間は一方向に進歩していくんだ、と無邪気に信じていたのですが、この本を読んで、人間ってどうもそんなに単純な生き物じゃなさそうだ、と思いましたね。

つまり、人間は突き詰めていくと、思ってもいなかったような本性を露呈することがある。 物理学の実験で、超高エネルギーの電子どうしを衝突させるとそこから様々な粒子が生まれてくるように、人間も究極な状況に置かれると、思ってもみなかったような本性をあらわにするんだなと。

人間とは一体何者なのか、どこから来てどこへ向かうのか、を知りたいという欲求が強くなったのもここからだった気がします。

親が本を読まない家ほど、「子どもが本を読まない」と嘆く


坪田:ユーチューブを見ていて思うのですが、どんどん企画が過激になっていますよね。最近は小説でも、今までにないすごいトリックやショッキングな出来事を起こさないといけない方向になっていないでしょうか。

堀内:ハリウッド映画にあるような、アドレナリンを分泌させられたらいいや、というような企画ですね。

坪田:そうです。ですが、たとえば名著であるカミュの『異邦人』では大きな事件は起きません。コンテキストとは直接関係なくも思える描写や背景、プロットによって人間というものを考察する試みがされています。激しい刺激でアドレナリンを出させるというよりも、まさにゆっくり考えさせるような本です。時代が進んで読者が入れ替わっても生き続ける、何度も読み返される本を読むのもいいですよね。

堀内:そうですね。しかし実は、僕は以前はそれほど古典を読まなかったんです。「2000年前の人が考えていたことをいまさら僕が読んでもしょうがない」と、若い頃は思っていたわけです。ですが冷静に考えてみると、ハードとしての人間の脳というのはそれほど進化しているわけではありませんし、昔の人たちの方が、より深く、長く思考していた気がしています。

ただし、古ければ古いほどいいというような骨董品的なイメージには抵抗を持っています。確かに現代でも役に立つ古典がたくさんあるのは事実ですが、新しい本を否定しているわけではないんです。『読書大全』でも、新しいものでは2019年に発行された本を紹介しています。

坪田:はい。『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング著、日経BP刊。データを基に世界を正しく見る方法について書かれた、日本だけで100万部のヒットセラービジネス書)も入っていますよね。

堀内:それから西洋の書物だけでなく、日本の本についても解説しました。良い本を純粋に選びたかっただけで、「古いからいい」、という骨董品みたいな基準はないんです。

構成=上沼祐樹 編集=石井節子

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