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日米スポーツビジネス最前線


誰がどのように「マルチプル」を高めているか



MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏(Photo by Alex Trautwig/MLB Photos via Getty Images)

米国プロスポーツリーグのコミッショナーは、リーグ経営のCEOとしての役割を求められているが、端的に言えばこのマルチプルをできるだけ高めるのがコミッショナーの仕事と言っても過言ではない。

例えば、MLBの現コミッショナーであるロブ・マンフレッド氏は「近い将来2球団を新規増設する」「球団増設は新球場を手にしていないオークランド・アスレチックスとタンパベイ・レイズの問題解決後に行われる」ことを明言している。これにより、ポートランド、ラスベガス、ナッシュビル、シャーロット、モントリオールといった都市が新球場計画をひっさげた投資家らと協力して熾烈な球団招致レースを展開している。

リーグが意図的に球団招致・移転マーケットを作り、需要過多な状況を創り出すことでマルチプルを高め、球団事業価値を最大化しているのだ。こうした強かなリーグマネジメントは日本のプロスポーツにはまだ見られないものだ。

リーグが経営不振の球団を「ターンアラウンド」させることも


また、球団の事業価値の暴落を防ぐために経営不振の球団の経営権をリーグが取得してターンアラウンドさせることも珍しくない。

MLB機構は野球人気の低いカナダでの経営に限界を感じたオーナーに球団を投げ売りされる気配のあったモントリオール・エクスポズを2002年に1億2000万ドルで買い取り、ワシントンDCへの移転の筋道を立てた後、2006年に現オーナーに4億5000万ドルで売却している。

このように、米国ではリーグが全面的に球団の事業を下支えし、将来の買い手に魅力的な事業環境を整備している。日本ではしばしば「身売り」と揶揄される球団売買が、米国では積極的な新陳代謝を起こす手段として歓迎されているのだ。

日米で球団の買収額に大きな差が開いてしまうのは即ち、球団保有形態の違いや、都市や投資家による球団争奪戦を引き起こして球団の事業価値を高めようとする「リーグマネジメント」の有無に起因している。


鈴木友也◎トランスインサイト株式会社創業者・代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、米マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。日本のスポーツ関連組織、民間企業などに対してコンサルティング活動を展開している。

連載:日米スポーツビジネス最前線

文=鈴木友也

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