I cover young people doing big things

ニキータ・コポトゥン (c) JUNIPER

「カレッジを退学して、ユーチューブで有名になりたい」。17歳の弟デニスがそう言うのを聞いたニキータ・コポトゥン(Nikita Kopotun)は、その夢を叶えてやりたいと考えた。弟は、ゲーム開発プラットフォーム「ロブロックス」のストリーマーとして生計を立てたいと願っていたのだ。

当時、カナダ・クイーンズ大学でエンジニアリングを学ぶ学生で、IT企業シスコの中国支社でインターンシップを終えたばかりだった彼は、そのときのツテを頼りに、上海の工場にぬいぐるみの製造を依頼した。デニスがファンたちにそのぬいぐるみを販売して利益を得られるようにするためだった。

それから5年が過ぎたころには、弟のデニスはユーチューブに900万人のフォロワーを抱え、数百万ドルの年収を得るようになっていた。兄であるコポトゥンも、eコマース企業「ジュニパー(Juniper)」を創業して経営者となっていた。インフルエンサーと提携して、彼らのブランド宣伝用のグッズを製造する企業だ。

フォーブスによる「30アンダー30リスト2021年版」に選出されたコポトゥンは、「インフルエンサーは、コマースの新時代を象徴する存在だと私たちは考えている」と述べる。「Tシャツやパーカーを販売するだけでブランドを構築できるわけではない。だから、クリエイターたちに柔軟なサプライチェーン基盤を提供したいと私たちは考えている」

ジュニパーは、最高売上責任者(CRO)を務める現在26歳のコポトゥンと、最高経営責任者(CEO)のジョエル・ウェグナー(Joel Wegner)、最高カルチャー責任者(CCO)のウィル・カーター(Will Cartar)、最高技術責任者(CTO)のライアン・ウォン(Ryan Wong)が、2016年にカナダのトロントで共同創業した会社だ。他に頼らず自力で成功をおさめた同社は現在、50人の従業員を抱え、60人のインフルエンサーと業務提携している。ユーチューブで1900万人以上のチャンネル登録者数を誇るZHCもそのひとりだ。

提携先のなかでも最も収益性が高いのは、尺の長いユーチューブ動画を公開するインフルエンサーで、その年収は最低でも50万ドルだ。ジュニパーはそういったインフルエンサーたちと業務提携を結んで特注の製品を製造し、売上の一部を得ている。2020年の売上は3100万ドルで、前年2019年の900万ドルから345%増加した。新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、オンラインで買い物をしたりエンターテインメントを楽しんだりする消費者が増え続けているのが成長の理由だ。

ジュニパーはカナダに本社を置いているが、製造拠点は中国だ。30の工場が、提携インフルエンサーのグッズを大量生産している。たとえば、コポトゥンの弟であるデニスは、黄色いネクタイを結んで気取っている黒ネコの「Sir Meows A Lot」。ゲーム実況のユーチューバー「InquisitorMaster」は、前後に動く耳つきのふわふわしたワンジー(つなぎパジャマ)。お笑いコンビの「Lanky Box」は、マンガがプリントされた寝具セットなどと、グッズは多種多様だ。それらは、契約して1カ月以内に製造される。

マテルのような玩具小売り大手が、インフルエンサーとコラボレーションすることはめったにない。手を組むとしても、ブリトニー・スピアーズなどの超有名人を相手にするのが普通だ。また、オリジナルのアパレルを自作できるプラットフォームの「カスタム・インク(Custom Ink)」や「ティースプリング(Teespring)」では、カスタマイズの範囲は限られている。オリジナルグッズを販売すれば、インフルエンサーはファンから収益を得ることができ、マネタイズの方法を新たに得られる。実際、ジュニパーでグッズを製造したインフルエンサーの多くは、売上を年々2倍、3倍と増やしている。

インフルエンサーにとって、ジュニパーで製造したグッズは、飛躍するための発射台のようなものだ。ここ1年で、デニスの「Sir Meows A Lot」はユーチューブでアニメの主人公になり、100万人近いチャンネル登録者を獲得した。デニスは、「ジュニパーによるデザインとブランディングで、自分のチャンネル全体が変化した」と話す。「グッズは、ロゴさえ付ければ簡単に作ることはできる。しかし、オーディエンスにぴたりとマッチしたグッズを作るほうが、価値はずっと高い」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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