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金投資家にとって今年は試練の時となっている。だが、現在の金相場不振の理由は、読者が考えているようなものとはおそらく違っている。

ヤフーのデータによると、S&P500種株価指数が年初来4.7%上昇する一方、金現物相場に連動する金上場投資信託(ETF)「SPDRゴールド・シェア」は5.7%下落している。騰落率には6週間ほどでじつに10ポイント超の開きが生まれている。

まず言っておくと、これはビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の人気が原因なのではない。暗号資産は規模の小さい市場であり、これまで投資家コミュニティーに大規模には取り入れられていない。

また、投資家の金への関心が薄れたわけでもない。調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータを見れば、投資家が相変わらず金を活発に買っていることがわかる。

では何が金相場の下落を招いているのか。端的に言えば、それは過去数週間に進んだドル高だ。金相場はドル高になると下落し、ドル安になると上昇する傾向にある。

金相場と米ドル相場が逆相関する傾向は長年続いており、米ドルが世界の基軸通貨であるかぎり、今後も市場の特徴であり続けるだろう。

主要通貨に対するドルの価値を指数化したドル指数は、年初来およそ1%上昇している。先に書いたとおり、金現物はこの間5.7%の下落だ。ヤフーのデータによれば、昨年は逆に、金相場が3月20日から年末までに27%前後高騰した半面、ドルの価値は14%落ち込んでいた。

昨年ドル安が進んだのは、簡単に言うと米連邦準備制度理事会(FRB)が異例の金融緩和を行ったからである。

だが、足元ではドルから逃避する動きは後退し、代わって米景気回復に対する楽観論が広がっている。こうした見方は、ジョー・バイデン米新政権の強い要請を受けて、大規模な追加経済対策が成立する見通しになったことが一因だ。

欧州連合(EU)のどんな対策をも凌駕するこの経済対策によって、米国はEUよりも早く、そして力強い景気回復を遂げるに違いない。

このほか、バイデン政権が中国やイランに対して前政権よりは融和的な姿勢をとっていることも、米経済への楽観論を支える重要な要素になっている。こうした対応は長期的には裏目に出る可能性もあるが、今のところ市場は深刻な問題の兆しを以前ほど認めておらず、したがって金を買う必要性も薄いとみている。

いずれにせよ、ドル高はしばらく続くと考えたほうがよいだろう。

編集=江戸伸禎

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