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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」


そこで送るのが、1本目でも2本目でもなく、1.5本目のメール。そこには、何の答えも結末もなくてもいい。ただ、いま、目の前で起こっている過程を書けばいい。

1本目のメールは「メール受け取りましたよのサイン」。2本目のメールは「依頼に対する答え」。

そして、「いまこういう過程を経ているから、お返事に時間がかかっているんです」という、「こういう過程」を実況中継(報告)するのが1.5本目のメール。

なぜ1.5本目のメールが必要なのか?それは、問い合わせをしてきた向こう側の人たちには見えない「過程」を共有することで、「いま何やっているの?」「どうして時間がかかっているの?」と、やきもきする気持ちをケアすることができるからだ。

リモートワークが当たり前になる時代。私たちが気をつけなければならないことは、単なる即レスや、正確な情報の伝達だけではなく、デジタルツールの向こう側にいる相手をひとりぼっちにしないこと。

どうせなら、「見て見て!裏でこんなことやってるんですよ〜!だから時間かかっちゃって!テヘ♪」と共有することで、相手を巻き込んでしまえば、催促する側とされる側、という壁がなくなり、同じ試合を見守るチーム感すら生まれることがある。

ある朝、私のもとへ到底納期に間に合わない仕事の依頼が来た。まずは「納期に間に合わない理由」の説明と、そのなかでも「できそうなこと」を羅列して、ひとつずつ状況確認をしている旨の連絡を入れた。そこからは、逐一連絡。情報はまとまっていなくてもよい。待たされる側は、逐一進捗を把握すれば安心するもの。最終的には、相手がどうしても必要だったものは違う形で用意できたが、納期には間に合わなかった。ただ、いまではなぜか「あの信じられない納期を守ってくれた!」と記憶がすり替わっている。いや……、間に合ってなかったよ? (笑)人は、実際に待たされたかどうかではなく、どれだけ待たされたと感じたかを覚えているものなのだとあらためて思った。

Slackでも電話でも、手段は何だってよい。大事なのは、「あなたをいつでも気にかけていますよ」が伝わること。そして、時には過程を共有して、結末までの道筋を「一緒に」たどること。何より、昨今のリモートワーク環境下では、相手に「待たされている」と感じさせないよう軽やかに、スピーディにコミュニケーションを取っていくことの重要性がより増していく。見えない結末を楽しむのは、映画や舞台だけでいい。仕事では、結末に向かう過程を一緒に共有していこう。

どんなデジタルツールが介在しても、結局は人と人とのコミュニケーションで成り立っているのが、仕事であり人間関係だ。そのツールの向こう側には「人」がいて、その人をひとりぼっちにさせないこと。こんな時代だからこそ、そんな温度感を、忘れたくないと、私は思う。


高木盛子◎電通ビジネスプロデュース局 ゼネラルマネージャー。俳人・高浜虚子を曽祖父にもつ文学一家に育つ。劇団を主宰し、全作品の脚本を手がける。仕事でも日常でも、「書く=伝える」を大切にしている。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=高木盛子 イラストレーション=尾黒ケンジ

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