日米スポーツビジネス最前線


コンテンツのNFT化を日本で拡大する上でもう1つ気になる点がある。

NBA Top Shotを見ていると、初期の立ち上げフェーズで市場に資金を拠出しているのは、マニアな収集家もさることながら、カネの匂いを嗅ぎつけた投資家たちだ。こうした純粋にスポーツファンと言えるかどうか分からないような顧客層も強く惹きつけている点が市場拡大の起爆剤になっているように見える。

実はデジタル・コレクティブルのようなスポーツファンのマニア心をくすぐりながら、同時に資産を増やすという金融的価値を提供するサービスは真新しいものではない。代表的な例としては、今や米国では80億ドル(約8800億円)を超える一大マーケットに成長したファンタジースポーツが挙げられるだろう。

ファンタジースポーツとは、自分がプロスポーツ球団のGM(ゼネラルマネージャー=選手獲得の最高責任者)になったつもりで好きな選手を集めて“空想(fantasy)の最強チーム”を作り、相手チームと対戦するというもの。実在する選手を集めてチームを作るのだが、その選手のシーズン中の実際の成績と連動し、野球なら「ホームランを打ったら1ポイント」「三振を奪ったら1ポイント」といった形で得られるポイントの合計で勝負するのだ。

ファンタジースポーツでは、実際に活躍しそうな選手を見極める「目利き」が重要になる。また、スランプに陥りそうな選手や怪我をした選手などはいち早く登録から外さなければならず、選手の調子や対戦相手との相性なども熟知しておく必要がある。まさに、実際のGMと同じ力量が問われるのだ。

今回はコラムのスコープから外れるので、ファンタジースポーツの成長要因には踏み込まないが(興味がある方は拙コラム「グーグルも投資するファンタジースポーツとは」をご参照頂きたい)、それを支える大きな社会的背景として、アメリカ人のリスクを負ってでも資産を増やすことが好きな国民性が挙げられるのではないかと思う。なぜなら、ファンタジースポーツは、見方を変えれば選手は金融資産、チームはそのポートフォリオという位置づけになり、求められるスキルはファンドマネージャーと同じだからだ。

アメリカ人は貯金をしないとよく言われるが、それはキャッシュがあれば家(不動産)や株に変えてしまうからだ。私もアメリカに20年暮らしているのでよく分かるが、銀行にお金を寝かせておくのはもったいないという雰囲気が非常に強い。それだけ国民に投資文化が根付いており、資産形成は多くの国民の関心事なのだ。

これとは対照的に、日本人は自分の考えでポートフォリオを組んでその価値が上がることに楽しみを見出すという投資的行為にあまり馴染みがない。今でもリスクを取って株式投資をするより、元本が保証された銀行の定期預金にお金を預けている人が大半だろう。実際、3月17日に日銀が発表した資金循環統計によると、2020年12月末時点における家計の金融資産は1948兆円と過去最高額となったが、現金・預金が半分以上の1056兆円を占め、証券は302兆円に過ぎない。

ファンタジースポーツが日本でまだ市民権を得ていない現状を考えると、こうした国民としてのリスク耐性の違いは、コンテンツのNFT化を進展する上でのマイナス要因になる可能性がある。日米の国民性の違いを考慮すると、NFTが受け入れられる社会の素地を作っていく草の根運動が必要になるだろう。

その意味では、米国のようにマネタイズの手段として活用していく前段のステップとして、例えばスポーツ組織が小中学校での金融教育のツールとしてNFTを展開していくなど、長期的視野での活動が面白いかもしれない。

金融リテラシーの向上は、今後の人生100年時代に少子高齢化を迎える日本の大きな課題であり、スポーツの社会課題解決力を発揮するまたとない機会にもなるだろう。


鈴木友也◎トランスインサイト株式会社創業者・代表。1973年東京都生まれ。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、米マサチューセッツ州立大学アムハースト校スポーツ経営大学院に留学(スポーツ経営学修士)。日本のスポーツ関連組織、民間企業などに対してコンサルティング活動を展開している。

連載:日米スポーツビジネス最前線

文=鈴木友也

Forbes SportsNFTスポーツイベントeスポーツスポーツオーソリティブロックチェーン
VOL.43

コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変...

VOL.45

加速する「スポーツメディア・コンテンツの複...

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ