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また、今後数カ月以内に、米国疾病予防管理センター(CDC)が2020年第1四半期のデータを公開する予定だという。米財団ウェルビーイング・トラストの最高戦略責任者、ベンジャミン・F・ミラーによると、データの入手が遅れているために、自殺者の増減は推測の域を出ない。データが存在しないのと同じだからだ。ミラーは言う。

「こんなにもどかしいことはない。自殺は深刻な公衆衛生問題なのに、2020年の自殺者を調べることすらままならない。幸い、アクション・アライアンス(自殺防止行動連盟)などは少しでも早く動こうとしてくれている」

「自殺者データ」、日本ではリアルタイムで開示?


ムーティエによると、米国で自殺のデータが手に入るまでの過程は非常に複雑で、郡や地域の制度に左右される。その制度によって、検視官(基本的に選挙で選ばれ、必ずしも医学的な訓練は受けていない)、もしくは監察医(任命制で選ばれた死因調査の専門医)が死因を報告することになっており、米国人口のほぼ半分がこのふたつの制度のどちらかを適用されている。

また、おそらくは社会的圧力や偏見によるものなのだろう、検視官が自殺を過少報告しがちであることも研究でわかっている。各地域がそれぞれの制度下でデータを集めてCDCに報告すると、CDCはさらに時間をかけてすべてのデータをまとめ、全国的な自殺率を確定させる。この過程に従来は1年半から2年かかっていたが、最近では10~12カ月程度に短縮されつつあるという。しかし、パンデミック下ではもっと長くかかることも考えられる。

では、日本ではなぜこれほど早くデータを公表できたのだろう。ミラーによると、日本では自殺者のデータがリアルタイムで開示されるため、すぐに分析して対策を講じることができる。一方、米国ではずっとデータ待ちの状態だ。

「現状を把握できないことには、対処するのは難しい」とミラーは言う。「自殺は予防できるし、そのための有効な対策も存在する。しかし、自殺のリスクに直面している人々をどうやって体系的に見つけ出すのか、全国規模で対策を講じるにはどうすればいいのか、それがまだわかっていない。大勢の命がかかった切実な問題だ」。

翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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