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報酬中枢を煽るSNS


ゲーム会社やスマホメーカー以外にも、不確かな結果への偏愛を巧みに利用している企業がある。それはソーシャルメディア、SNSだ。フェイスブック、インスタグラムやスナップチャットがスマホを手に取らせ、何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を起こさせる。その上、報酬システムがいちばん強く煽られている最中に、デジタルな承認欲求を満たしてくれるのだ。

あなたの休暇の写真に「いいね」がつくのは、実は、誰かが「親指を立てたマーク」を押した瞬間ではないのだ。フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなごほうびへの期待値を最大限にもできる。

SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを、ちゃんとわかっている。時間を問わずスマホを手に取りたくなるような、驚きの瞬間を創造する知識も持っている。「『いいね』が1個ついたかも? 見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」と同じメカニズムなのだ。

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Getty Images

このような企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇っている。そのアプリが極力効果的に脳の報酬システムを直撃し、最大限の依存性を実現するためにだ。金儲けという意味で言えば、私たちの脳のハッキングに成功したのは間違いない。

シリコンバレーは罪悪感でいっぱい


極めてテクノロジーに精通している人ほど、その魅力が度を過ぎていることを認識し、制限した方がいいと考えているようだ。ジャスティン・ローゼンスタインという30代のアメリカ人は、自分のフェイスブックの利用時間を制限することに決め、スナップチャットのほうはすっぱりやめた。依存性ではヘロインに匹敵するからと言って。スマホの使用にブレーキをかけるために、本来は保護者が子供のスマホ使用を制限するためのアプリまでインストールした。

ローゼンスタインの行為が興味深いのは、彼こそがフェイスブックの「いいね」機能を開発した人物だからだ。つまり、「立てた親指」の立役者は、自分の創造物が度を過ぎて魅力的だと感じているのだ。あるインタビューでは、後悔したようにこう発言している。「製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える──それに気づいたのは後になってからだ」

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