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ネズミに見られた現象がサルにも見られたわけだが、同じことが人間にも言える。お金がもらえるカードを被験者に引かせてみる。毎回お金がもらえるとわかっていると、確実にもらえるかわからないときほどドーパミンは増えない。ネズミやサルとまさしく同様に、ドーパミンが最も増えるのは2回に1回の頻度だった。つまり、脳にしてみれば、もらえるまでの過程が目当てなのであって、その過程というのは、不確かな未来への期待でできている。

なぜ脳は不確かな結果のほうに多くのドーパミン報酬を与えるのだろうか。最も信憑性が高い説明はこうだ。「ドーパミンの最重要課題は、人間に行動する動機を与えることだから」

「もしかしたら」がスマホを欲させる


あなたの祖先が、たまにしか実のならない木の前に立っている姿を思い浮かべてほしい。実がなっているかどうかは地上からはわからないので、木に登らなくてはいけない。登ってみて何もなかったら、別の木にも登って探すことが大事だ。ハズレを引いてもあきらめない人は、そのうちに高カロリーの果実というごほうびをもらえる。それで生き延びる確率も高まる。

不確かな結果でドーパミンの量が急増するのは、新しいものを前にしたときと同じ理屈なのだろう。報酬を得られるかどうかわからなくても、私たちは探し続ける。この衝動により、食料不足の世界に生きた祖先は、そこにある限られた資源を発見し活用してきたのだ。

人類が狩猟生活を中心にしていた何万年も前から、人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛。現代ではそれが問題を引き起こしている。例えば、スロットマシーンやカジノテーブルから離れられなくなる。ギャンブルは長い目で見れば損をするとわかっていても、やってしまう。確かに、純粋な娯楽としての魅力はある。だが、適度な距離を取れずに、ギャンブル依存症になる人も確実にいる。脳の報酬システムが、不確かな結果にこんなにも報酬を与えてくれるのだから、ギャンブルの不確かさもとてつもなく魅力的に思えるはずだ。「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」そう考えるのだ。

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Getty Images

このメカニズムをうまく利用しているのは、ゲーム会社やカジノだけではない。チャットやメールの着信音が鳴るとスマホを手に取りたくなるのもそのせいなのだ。何か大事な連絡かもしれない──。たいていの場合、着信音が聞こえたときの方が、実際にメールやチャットを読んでいるときよりもドーパミンの量が増える。「大事かもしれない」ことに強い欲求を感じ、私たちは「ちょっと見てみるだけ」とスマホを手に取る。しかもこれを頻繁にやっている。起きている間じゅうずっと、10分おきに。

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