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共に、生きる──社会的養護の窓から見る


もちろん性教育の問題もあるが、前編で触れた、「知識があってもアクセスできない」という問題もある。お金のある人しか医療が受けられないのなら、医療全体の課題の話になる。妊娠は自己責任というメッセージが社会で発信されるなら、ではそもそも妊娠出産とはどういうものか、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(すべての個人とカップルが自らの性や健康、人生について自由に決めていい権利があること)の話にもなる。

「やっとたどり着いた窓口で、制度の枠組みからあふれてあなたには使えませんよとされてしまうと、まるで社会から排除された気持ちになっていくことがあります。

だからこそ、ぴさらの利用も、施設に入ることや生活保護だって、その窓口になる人や社会全体が、快く『これまでしんどかったわね。どうぞ使って!』と伝えられたら、彼女たちはどれだけ安心し、励まされるでしょうか。困っているときに助けてくれる人がいることは、社会の中に居場所があると感じられる経験になり、大きなエンパワメントになる。そんなことを感じます」

中島さんによると、実は「お産」の現場もエンパワメントの要素があるという。

「『若さで勢いよく産んだね』とか『あんなに痛かったのによく耐えたね』、『授乳も上手だね』とか、お産の前後はとにかく周りの人から褒められる。それを誇らしげに教えてくれるんです。私、とっても頑張ったよ、って。それってとても大切な経験。これからの彼女の人生を支える力になりますよね」

地域で生きる、「私たちの中のひとり」として



project HOMEの協働団体NPO法人PIECES理事の斎典道さん

ぴさら開設にあたっては、協働団体である認定NPO法人PIECESとも議論を重ね、どのような場所にしたいかを話し合った。PIECES理事の斎典道さんは率直な思いを語る。

「私たちが作っていきたいのは専門的な支援施設ではなく、一人ひとりにとっての HOMEと思える場です。もちろん専門的な知識は必要だけど、自分を大切にしてもらえる、安心して居られるために、多様な人が、『大切』や『安心』のかけらをここに持ち寄ることができるんじゃないかと思って。ピッコラーレのスタッフは、助産師や保健師、社会福祉士などですが、専門職のメンバーも地域の協力者の方々も、一市民としての関わりの中から、人と人として、大事にできる関係が紡いでいけたらいいと思っているんです」

文、写真=矢嶋桃子

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