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共に、生きる──社会的養護の窓から見る


しかし前編でも触れたが、行政の支援の枠にはどうしてもフィットしない女性たちがいる。「既存の枠組みの中ではまたしんどい状況に陥ってしまうのでは」と悩んだ支援者たちが、ピッコラーレにたどり着く例もあり、制度の狭間に落ちてしまう女性たちの、安心と安全を担保する支援にはどこも苦労していることがうかがえる。

病院とは違う、専門家集団。相談の背景を考えること


ピッコラーレは自らの事業を「妊娠相談」ではなく「妊娠葛藤相談」という。その意図を中島さんはこう語る。

「葛藤って、ツルが絡みあう様子を表していますよね。妊娠で悩むずっと前から、貧困や暴力、疾患など、自分自身ではどうすることもできない困難を抱えているにも関わらず、社会や制度の枠組みから排除され、それらが絡みついた状態のまま孤立している女性たちがいます。関係性の貧困もありSOSを出せる相手に乏しい人も多いです。それがさらに妊娠をして、いよいよ自分の力だけではどうしようもなくなり、やっとの思いでSOSを出して相談につながります。だから、『妊娠相談』ではなくて『妊娠葛藤相談』だと思っています」

妊娠というと医療的な相談のイメージがあるかもしれないが、「福祉的な視点」が必要とされる場面は多い。そのため、ピッコラーレでは当初から社会福祉士の資格を持つメンバーも一緒に活動をしている。

「0カ月0日死亡の話に触れても、厚労省の虐待死事例検証報告を読んでも、その背景にあるものは、当事者だけの問題ではないことは明らかです」(中島さん)

10代の妊娠・出産は「若年妊娠」といわれるが、この言葉が用いられるとき、そこに偏見やレッテル貼りが含まれることで、本質的な問題を見えにくくしてしまうことがある。

「『若年妊娠』と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか? 一人前になる前に性行為をするのはいけないことで、どうして避妊をしなかったんだ、次から気をつけなさい、で終わってしまうかもしれません。でも、もう少し解像度を上げてみると、避妊ができなかったのは、避妊に協力しない相手の男性や、性について子どもたちに教えてこなかった大人たち、避妊へのアクセスが悪いままにしている社会システムの存在が見えてきます。

みんなが自分には関係ないと放置している課題を、まだ子どもの若年妊婦が、誰にも言えないままひとり命がけで背負っている。このことを、もっとみんなで考え、変えていきたい」

文、写真=矢嶋桃子

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