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共に、生きる──社会的養護の窓から見る


「この言葉ができたことで、出産後からではなく、妊娠期からのサポートの必要性が認知されるようになりました。一方で、彼女たちが困った時に利用可能な制度は、児童福祉法を根拠法としたものでは足りず、実際はその枠内で収まらないことが多いんです」(中島さん)

18歳になる前の子どもたちを守る法律として、児童福祉法がある。家庭が安心して生活できる場所でなければ、児童養護施設や里親など社会的養護につながることができる。しかし妊婦となると、とたんに受け入れ先がなくなる。

基本的に、児童養護施設は学校に通っていること、自立援助ホームは働くことが条件だ。出産して本人が子どもを育てる場合は母子で入れる母子支援施設の対象になるが、学校も辞め、仕事もできない、しかも妊婦である若年女性を預かれる施設は、児童福祉法の下ではほとんどない。

すると検討されるのが、売春防止法や配偶者暴力防止法(DV防止法)の下で運営される、婦人相談所の一時保護所、婦人保護施設(シェルター)だが、そもそもこれらの事業の根拠法の中では、「特定妊婦」は対象女性として明記されていない。

そのため、施設によっては、妊婦であることが考慮されなかったり、個人のプライバシーが守られる場所ではないところもあり、我慢を強いられることも少なくない。また基本的に居場所が知られないよう通信機器は持てないため、誰からも逃げる必要がない場合でもスマホの利用に制限があることがほとんどだが、スマホは、現代の10代にとって生命線だ。スマホの持ち込みができないことを理由に施設への入所を拒否する人はとても多い。

「親もパートナーも友人も頼れず、一人きりで妊娠を抱えてきた妊婦さんからのSOSをキャッチしたとき、なんとかその子に穏やかな妊娠期を、と思います。医療や福祉、場合によっては司法のサポートも必要となるかもしれない。妊娠期を健やかに過ごすためには、睡眠や休息、栄養、妊婦検診やときには治療も必要です。でも、妊娠週数に関わらず、妊婦だと合併症を持っていたり、いろいろとリスクが高いので、まずは『安全』を担保する場所を見つけることすら大変な状況です」(中島さん)

本来であれば、安心安全な環境で、妊娠期から産後のことをじっくり考え準備できるのが望ましい。しかし今現在、妊娠週数に関わらず、ある程度の期間、いつでも利用可能な公的なサービスは整っていない。

女性たちからの相談を受けながら、ピッコラーレとして「場」を持つことへの構想は徐々に広がっていった。

後編では、居場所なく漂流する妊婦のための居場所を作るプロジェクト、「project HOME」を紹介する。

project HOME
project HOMEは多様な生き物が居られる「しおだまり」のイメージだ

連載:共に、生きる──社会的養護の窓から見る
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文、写真=矢嶋桃子

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