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共に、生きる──社会的養護の窓から見る


メール相談フォームには「誰かに相談したか」を答える欄があるが、高校生世代では65%が「誰にも相談していない」と回答している。親にもパートナーにも、妊娠した事実を伝えられない人がたくさんいる。「若年になればなるほど相談できず、孤立していることが数字からは見えてきます」と小野さんも言う。

妊娠が知られてしまったら、学校や仕事が継続できない、相手と別れることになるかもしれない、その場所に住み続けられない……。思いがけない妊娠では、刻一刻と迫るタイムリミットの中で様々な選択が求められる。

妊娠を防ぎたくても、現実の壁は高い


また、性について正しい知識を教えていない社会の責任と同時に、正しい知識を持ったとしてもそれを行使できる社会になっていないと、中島さんは指摘する。

「たとえば緊急避妊薬(アフターピル)を飲みたいと思った時に、本人が処方してくれる病院を探し出せるか。子どもが払える費用か。医師から怒られたり、親を連れて行かないと処方してくれない病院もある。正しい知識があったとしても、アクセスしにくい現実があります」

東京など大都市は病院もたくさんあるが、地方では探すのに苦労するとも言う。

「学校が終わってから、隣の市まで自転車で30分かけて行くとか。部活を休むにも理由がいるから、部活は休まず、だけど72時間以内に内服しないといけないと考えると、ものすごくハードルが高いですよね」

ピッコラーレ代表 中島かおりさん
ピッコラーレ代表の中島かおりさん

冒頭の、日本産婦人学会会長の「処方箋なしでの薬局販売への反対」意見について、再度考えたい。性教育の不備に対する不満も聞かれたが、性教育が適切になされ、本人が自分の意思で妊娠を防ぐと決めたとしても、現実の壁は高いのだ。

アフターピルが服用できず妊娠してしまえば、今度は中絶手術という、身体にも心にも費用面でもさらに大きな負担が女性に課されることになる。中絶手術を行ってくれる病院探しや、条件、費用など、またもやハードルをいくつも超えなければならない。

相談する人がいなかったり、精神状態が不安定だったりすると、このハードルを一人で超えることは難しい。そうしているうちに中絶可能期間を過ぎ、妊娠を継続する以外の選択肢がない、と諦める女性は、決して少なくないと感じる。

実は中島さんは3年前、ドイツに視察に行った。そこで産婦人科医や妊娠葛藤相談員に、日本では児童虐待死の背景に若年妊娠があることを伝えたところ驚かれた経験がある。

「ドイツでは包括的な性教育が実施されていて、10代は低用量ピルやアフターピルに医療保険が適用され、女の子たちは無料で内服できます。アフターピルはドラッグストアで手に入れられるので、そもそも妊娠を継続せざるを得ない状況になりにくいよ、と言われたのです」

文、写真=矢嶋桃子

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