Forbes JAPAN 編集部 編集長

ものづくり体験・体感施設「みせるばやお」での子供向けワークショップ

「幸福感のズレ」という調査がある。これは「都道府県別幸福度ランキング」や「住みたい街ランキング」など多種多様な指標をもちいた「客観的幸福度」と、「主観的幸福度」のギャップである。

「幸福度が高い」と言われる地域に住んでいても、「なんで?」と思う人もいれば、逆に環境は不便でも自分のことを幸福だと思う人が多かったりする。このズレを腑分けしていくと、面白い要因が見えてくる。

毎年のように幸福度ランキングで一位になる福井県は、2013年にこのズレを調査した。すると、客観と主観が一致していたのは主に女性だった。女性が幸福と思える価値基準は、子育て、教育、安心、共働きできる環境であり、それが「客観的幸福度」と合っていた。これらの幸福の条件は、未来に向いた「希望」である。

一方、主観的な幸福度が低かったのは、20〜30代の男性だった。若い社会人男性の場合、女性と違って「目の前の経済状況」に価値基準があった。製造業が多い県であり、製造業はリーマン・ショックの打撃が時間差で現れるので、それが要因として現れたとも言える。では、若い男性たちが希望をもてる「住めば都」になるにはどうしたらよいだろうか?

「住めば都」に心境が変化する理由


「自分の住んでいる街が好きとか嫌いとか考えたことがなかった」「実家がある街に帰りたいと思ったことはなかった」という声をよく耳にするようになったのは、大阪府八尾市の若手経営者たちと出会うようになってからだ。街に関心がなかった彼らは、現在、地域の活性化を楽しんでおり、自分たちの心境の変化に驚いている。なぜ変化したのか。一言で言うならば、「人生ストーリーの編集力」だろう。

私が八尾市に注目するきっかけとなったのは、Forbes JAPANが2018年から始めた「スモール・ジャイアンツ」アワードだ。組織はスモールでも、社会にインパクトがある価値を創出する「小さな大企業」を全国から発掘する、いわば「中小企業甲子園」である。

なぜか八尾市の企業が最終選考に残るケースが多く、受賞企業だけをみても、釜焚き純石鹸づくりの木村石鹸工業(2019年ローカルヒーロー賞)、電解発色による黒いステンレスで世界を驚かせたアベル(2020年カッティングエッジ賞と審査員特別賞)、世界的な教材メーカーのアーテック(2020年パイオニア賞)、そして、2021年1月に開催される全国大会の決勝進出は逃したが年間5000種のゴム製品を開発製造する錦城護謨(ゲームチェンジャー賞)がある。

ひとつの町からこれだけの受賞企業が出る例はほかにない。

文=藤吉雅春

PICK UP

あなたにおすすめ