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それから、自分の作品のテーマを考え、たどり着いたのが「花」だった。誰もが美しいと思う、普遍的なテーマ。それを、自らが得意とするファッション写真的なアプローチで撮ろうと決めた。

ガーデニング好きだった母親の影響で、子供の頃から花は身近な存在だった。日本を離れ、長く海外に住んでいた頃は、母親の誕生日に花の写真をプリントして贈っていた。

では、なぜフレッシュで鮮やかな花でなく、枯れた花なのか。聞くと、「昔から、撮りたいと思うタイミングは少ししおれたり、枯れたりしたとき。その方が、質感や表情がある」と言う。

6年間、行きつけの花屋で数本の花を購入しては、枯れ具合を見計らって、夜な夜な事務所で撮影した。花をモデルに見立て、ライティングを変え、ポーズや角度を変え、時には水滴をつけて、いろいろな表情を撮った。

バラ、チューリップ、カーネーション、紫陽花など、色がくすみ、普通なら出番を終えたタイミングの花たちが、写真となって圧倒的な存在感を放つ。


 (c) Tajima Kazunali, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

「花びらが生肉のように艶かしかったり、人食い植物のようにグロテスクだったり。奇形の美しさというのかな。または、透けるオーガンジーや滑らかなシルクのような質感で、ギャルソンやアレキサンダー・マックイーンのドレスのようにも見える」

作家としても才能を発揮し、なんなく作り出しているかのように見えるが、「ゼロから課題なしでスタートするのは、なかなか苦しみが多い」と漏らす。

「仕事は最初からゴールが設定されていて、そこに向けて最善を尽くし、アートディレクターなりクライアントなりがokを出してくれる。でも作品は、最初から最後まですべて自分で判断しなくちゃいけない。自分で作りたくて始めたけど、ずーっと宿題が終わらない感じ。特に最後は苦しかった」



念願のギャラリーで、現代アートの世界へ


撮り始めたときから個展は頭の中にあり、展示するギャラリーにもこだわりがあった。

「やるならどうしても、現代アートギャラリーの『AKIO NAGASAWA』でやりたいと思っていた。いま世界で一番、日本の写真家の作品を売っているギャラリーなので。ただ、長澤章生さんは海外を飛び回っていて、なかなか会えない人。それがちょうど1年前に思わぬところで繋がり、話ができたんです」

編集=鈴木奈央 写真=小田駿一

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