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ハイエンド・ブランディング・プロデューサー


2. アートはソーシャルエリートの登竜門


特にアメリカは、歴史的にもヨーロッパの上流社会に倣って、オペラやバレエを鑑賞したり、美術館の友の会に入ったりアートを買ったりすることが、ソーシャル・エリート・クラスに入るための登竜門になっています。

東海岸では、振興の実業家らがこぞってニューヨークにメトロポリタンオペラやMoMA、グッゲンハイムなどの美術館を建て、それがゴールドラッシュの後に西海岸にも移りました。

日本でも一時期、有力者が印象派をこぞって買った時期がありましたが、残念ながら国として現代美術には投資をしないという選択をし、アートを使って国際的な立ち位置を作る機会を逃してしまいました。

対して中国、インドネシア、シンガポールなど、日本の後に発展してきたアジアの国々は、自国のアーティストや現代アートに対して戦略的な投資を展開しています。

中でも香港は、アートバーゼルの誘致に成功したことで、世界トップクラスのギャラリーが集結し、富裕層が訪れるようになっています。さらに九龍地区にMプラスという巨大文化センターを国家プロジェクト的に作り上げるなど、アジアにおけるアートの覇権を取っています。


アートバーゼル開催に先立ち、VIPプレビューに集まるコレクターたち。Photography by Jeremy Hunter/René Burri Art Basel Hong Kong

3. アートは情報収集の手段・社交のツール


またアートは、特別な社交の「サークル」に入るための「チケット」でもあります。

アートをフックに不動産、製薬、金融、テクノロジー、医療などのビジネスで成功した人たちが集まる社交の場では、最先端のビジネスや経済、政治や選挙の情勢、投資先の情報など、そこにしか流通しない内輪の情報が行き交います。アートを追いかけるということは、ある意味選ばれた人だけが集まるサークルに入って、希少な情報を得る手段にもなり得るのです。

「出身がどこであれ、ニューヨークのパーティーで会う人たちとの会話は、自分が何を集めているかが名刺交換と同様に大事。コレクター仲間でよく知られているものを買うことがステータス。自分の家に人を招いた時に『あ、これ!』って言われるような名のあるアーティストの作品を機会あるごとに買っていくことに対し、皆とても神経を尖らせている」と前出の中西氏はいいます。

日本でも、バスキアを所有したことで知られる前澤友作氏が、国内でライバルの少ないアートの分野に着目して一躍名を知らしめたという戦略は、アートを使って自身の立ち位置を築くことに成功したセルフブランディングの好例といえるでしょう。

また、商談においてもアートから入った方が、ビジネスを前面に出すよりも進めやすいとベネッセホールディングス取締役の福武英明氏は話します。

「ビジネスだと交渉する際に同じ土俵になるけど、アートや文化系の話になると、そこに利害関係がないので、共通の話題である程度高い教養が必要なトークをしつつ、そこからビジネスにつながる、という点ではアートがインフラのような役割を果たすことは多い」


アートバーゼル香港に設けられたUBSのVIPラウンジ。専属の点心師が特注の五色の点心でおもてなし

文=山田 理絵

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