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アート、カルチャーから学ぶコピーライト


よく「著作権法は表現を保護し、アイデアは保護しない」といいます。大きな視点をいうと、著作権法は、クリエイターの保護と著作物の公正な利用によって文化の発展に寄与することを目的としています。アイデアは保護しないというのは、あるアイデアからは多様な表現が生まれる、そして、多様な表現が生まれることが文化の発展になる、というのが著作権法の設計思想であるからです(図2参照)。

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図2:著作権法の設計思想

究極的に言ってしまえば、だれか最初に浮遊写真を撮影した人に、浮遊写真の撮影を独占させたほうが文化の発展になるのか、そうではなく浮遊写真というアイデアから多様な浮遊写真が生まれることが文化の発展になるのか、という政策判断になります。

もちろん「ココロふわりキャンペーン」の写真は、単に浮遊写真というレベル以上に「本日の浮遊」と似ているとは思いますが、これを著作権侵害とするのは独占の範囲が広すぎると感じます。

もうひとつ、最後に2017年の報道事例(※7)を素材に考えてみましょう。

世界最大規模の写真コンテスト、ソニーワールドフォトグラフィーアワード2017の一般公募部門でショートリストに選出されたルーマニア人アーティストのAlex Andriesiさんによる作品です。これも浮遊写真ですね。

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作品A:Alex Andriesi, Far from gravity, 2016 出典:Alex Andriesi Website

これに対して、Andriesiさんの作品(以降、作品A)は自分の作品の盗作であると訴えたのは、ポルトガルを活動拠点とする写真家のAnka Zhuravlevaさんでした。Zhuravlevaさんの写真(以降、作品B)は次の作品です。

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作品B:Anka Zhuravleva, Distorted Gravity, 2013 出典:Anka Zhuravleva Website

これまでに説明した視点で2つの写真を比較してみましょう。

被写体は両作品とも浮遊する目を閉じた女性、少女が複数の球体とともにひとつの球体を寄り添うように抱えて浮遊するシーンを撮影しています。背景はいずれもコンクリートづくりに見える空間とされています。

被写体は撮影者が制作したものでしょうから、人為的被写体として被写体の共通性も考慮することになるでしょう。

詳細に比べると、

・作品Aの球体の数は9個であるのに対し、作品Bでは13個。
・球体の色も作品Aが黄色に対して、作品Bではややオレンジがかかった色となっています。
・作品Aの被写体は少女に対して、作品Bでは成人した女性と思われます。

・モデルの髪の色も作品Aはブロンドである一方、作品Bでは黒髪です。
・モデルの足元については作品Aがドレスと同じ色の靴であるのに対して作品Bでは裸足。
・作品Aは球体を抱えるモデルの手の位置が球体の中心に対して、作品Bでは球体の奥側。
・両作品では背景となる建物も異なります。

文=木村 剛大

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