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国際ジャーナリストのアメリカ深層メモ "Eye-opener"


しかし、である。こうした発言にウィスコンシン州の保安官事務所は、確かに郵便が捨てられていた事実はあったが、そこには郵便投票などは含まれていなかったと説明。メディアでは「またトランプの嘘か」とこの話は終わるところだったが、トランプは止まらなかった。

全国民が注目したテレビ討論会で、その話を再び取り上げたのである。こうして嘘を本当のように繰り返し語り、「白を黒に」しようとするのはトランプの得意技だと言える。


新型コロナウイルスで入院してからわずか1週間後に講演を行ったトランプ大統領(Getty Images)

トランプの度重なる主張に、テレビ討論会の後日、さすがに記者が改めて事実確認を求めた。ホワイトハウスでの記者会見で、ケイリー・マクナニー報道官に対して、「『川で彼らが投票用紙を発見した』と大統領は言っているが、『彼ら』とは誰のことで、『川』とはどこの川か」と質問。マクナニーは、「彼らとは地元当局で、川はウィスコンシンの水路だ」と直ちに回答。

記者は粘る。「私はニュースで正しい情報を伝えたい。大統領は『大量の投票用紙が川で見つかった』と述べているが、それはどこの川なのか」

結局、マクナニーは質問に答えなかった。そしてホワイトハウスの他の記者たちもこの「川」問題についてそれ以上は聞かなかった。筆者はメディアが白黒はっきりさせないやりとりにも不完全燃焼な感覚になった。アメリカの民主主義の根幹に関わる問題のなのに、なぜさらに問い詰めないのか、と。

もっともトランプ大統領の典型的なスタイルであると言っていい。彼は自分の発言が事実かどうかは関係ない。言い切るかどうか、なのである。説明も尽くさない。

こうした怪しい「情報」を繰り返し吐き出していることから、トランプが重要なメッセージツールとしている米SNSのツイッターやフェイスブックは、彼の公式アカウントからの発言に警戒感を示している。そして国民に不利益となりそうな度を越した怪しい情報を書いたツイートには警告をつけたり、投稿を削除したりしている。

ただこのトランプ流のコミュニケーションは、大統領選に向けてさらに続くことになる。


連載:国際ジャーナリストのアメリカ深層メモ “Eye-opener”
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文=山田敏弘

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