Close RECOMMEND

先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま

E.V.A.プロジェクト広告動画より

私たちがふだん「当たり前」だと思っている行動も、よく考えると、必ずしも当たり前ではなかったりする。当たり前のなかには、知らず知らずのうちに偏見が潜んでいて、私たちをそうさせるのかもしれない。

スウェーデンの自動車会社ボルボによる「E.V.A.プロジェクト」は、そんなことに気づかせてくれる。カンヌライオンズ2019のクリエイティブ・ストラテジー部門でグランプリを受賞した事例だ。

独自データの公開で良い評判も


この事例によれば、現状では多くの自動車メーカーにおいて、男性の衝突実験用ダミーを使用した実験データに基づき、クルマは設計されているという。多くの場合、長年の習慣で、当たり前のように男性ダミーを使っているのだろう。そこには「女性ドライバーを考慮に入れなくても構わない」という偏見が存在している。

そうしたこともあり、女性がむち打ち症になるリスクは、男性と比べて高くなっているそうだ。また、女性の場合、胸部の骨格や強度の違いから、自動車事故の際に胸部に怪我を負うリスクも男性よりも高くなっている。

こうしたことからボルボ社では、衝突実験用ダミーも含めて男女平等になるようデータを収集しているという。

さらに実際の事故の分析などさまざまなデータも活用し、最適な保護機能をめざし、受ける衝撃を最小限に抑えるようなクルマの構造やシートベルト、サイド・エアバッグの開発も、ボルボは重ねてきた。


ボルボ「The E.V.A. Initiative: Equal Vehicles for All」

「E.V.A.」とは「Equal Vehicles for All(すべての人に平等な乗り物)」を表している。もちろん、これをEVA(エヴァ)と読めば、人類最初の女性と言われるイヴに由来する女性名であり、女性を強く意識したプロジェクトであることがわかる。

さらにE.V.A.プロジェクトでは、男女平等になるように収集したデータ、その研究結果を誰でもダウンロードできるようにした。「あらゆるクルマがより安全になることを願って」、自社の強みの源ともなり得る重要な情報を、競合他社にも公開したわけだ。

この事例では、この「独自データの公開」も重要なポイントになっている。自社の強みを囲い込まずに、世の中のために使う。もちろん、そのことによって、ボルボには良い評判が得られるというメリットもある。「安全なクルマ社会をリードするボルボ」というイメージも獲得できるというわけだ。

社会的な役割を遂行しているブランドが消費者からの好意を得やすいという、いまの時代を象徴するような試みだと言える。

文=佐藤達郎

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ