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だが、期待に反して厳しい現実に直面した。スポンサー企業が東京2020組織委員会とのパートナーシップ契約に移行。伊藤の活動への予算が大幅に削られたのだ。それでも伊藤は前を向く。

「障がいのある人のエスコートを学んで共生社会を考える『ボランティアアカデミー』講習に、大学や企業から注目いただいています」。東京五輪延期の1年もボランティア事務局として山積していた課題への対応、リモート体験会を磨きあげる時間ととらえる。

また、コロナ禍を考慮したリモート体験会やeスポーツ、参加者とパラリンピアンが共に楽しめる新たな競技作り、そして求められるところに優秀な人材を派遣する「ボランティア人材バンク」の構築にも取り組む。ユニバーサルな、誰もが輝く社会の実現のため。

いとう・かずこ◎新潟県生まれ。1985年新潟大学工業学部卒。パステルラボ代表取締役社長。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。2005年特定非営利活動法人STANDを設立。代表理事に就任。

プラットフォーム化を目指すサッカークラブ ── ONE TOKYO



現在ブラジル1部ボタフォゴに所属する本田圭佑。「ファン主導」のサッカークラブをつくるべく構想・発足した

2020年1月、本田圭佑が発起人となりサッカークラブ「ONE TOKYO」が立ち上がった。現在は東京都4部リーグに所属。日本トップのJ1リーグから数えると、これより下が存在しない10部リーグに相当する。まさに0からのスタートを切ったONE TOKYOの運営責任者は本田がTwitterを介して出会い、その場で直々に抜てきした、大学を卒業したばかり、弱冠23歳の奥山大が務める。

奥山は、ONE TOKYOを「全員参加型クラブ」とし、ユニークな運営を行う。例えば、ONE TOKYOではオンラインサロンのメンバーによる選挙を通してクラブのあらゆることが決定される。ユニフォームデザインからクラブの中枢を担うゼネラルマネージャーや監督も投票によって決められた。

さらに、SNS運用や試合風景の撮影、イベントの開催まで、みな自発的に手を挙げ行動する。クラブから何かを要求することはなく、当然報酬は発生しない。それでもみな1万円の会費を払いながら、クラブ運営に関わっているという。

提案内容に関する過去の経歴やスキルは不問。自分がやりたいことをONE TOKYOというクラブを “利用”しながら携わることができるのだ。「みな自由にONE TOKYOを使ってくれていい」と奥山は笑みをこぼす。

なぜこれほど自由な運営をしているのか。聞くと、「僕は、これまでも自分の意志で自分の道を決めてきたつもりでした」と話し出す。「でもいまふり返ると、大人があらかじめ用意してくれた道を進んできただけなのかもしれないと思いました。今回初めて自分の意志でいまの仕事を始めた。だから、ONE TOKYOに関わる人たちも、うちをうまく使って、自分の選択でキャリアを切り開いてほしいんです」

奥山の主な仕事は、選手からサポーターまで、クラブに関わる人たちすべてがクラブ経営に能動的に関わることができる環境を整えることだ。

サッカークラブ運営というよりプラットフォームづくりですねと、と言うと奥山はうなずく。

「サッカーだけじゃなく、ゆくゆくは他のスポーツもやりたい。人々がスポーツを起点に関わり合いながらひとつになる世界への一歩をいま踏み出しているんです」。

おくやま・まさる◎1997年生まれ。慶應義塾大学体育会ソッカー部マネージャー、一般社団法人ユニサカの代表理事を務める。2019年12月、全員参加型のサッカークラブ「ONE TOKYO」運営責任者に現役大学生として就任。




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文=田中一成、丹由美子 写真=平岩享

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