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共に、生きる──社会的養護の窓から見る

2018年に出版された、プログラムの真髄をまとめた『虐待・親にもケアを』(森田ゆり編著、築地書館)

虐待や不適切な言動で子どもを傷つけてしまっている母親たちの「回復」を掲げたプログラムがある。MY TREEペアレンツ・プログラム(以下、マイツリー)だ。これまでに1241名の親たちがプログラムを修了し、子どもへの暴力や虐待的言動を終止するよう促してきた。

2000年に児童虐待防止法が制定されてから20年。マイツリーはその1年後に兵庫県でスタートし、今年で19年を迎える。研修を受けた実践者たちのグループは全国に広がり、児童相談所でも実施されている。

プログラムの開発者である森田ゆりさんは、長年、米国と日本で、子ども・女性への暴力防止に関わる専門職の養成に携わり、暴力の被害、加害からの回復プログラムの開発や実施、指導に当たってきた第一人者だ。私が勤めるアフターケア相談所ゆずりはも、東京でのマイツリー実践グループのひとつであり、私もファシリテーターを務める。

子どもが安心して暮らすためには、親が変わらなければ


マイツリーのような、虐待に至ってしまった親のためのプログラムは日本ではまだとても少ないのが現状だ。

児童虐待防止法が制定されてからも、虐待の通告件数は毎年増加しており、虐待によって亡くなる子どもの数も、直近の統計では1年間で65人。5〜6日に1人の子どもが亡くなっていると言える。(厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」第15次報告を参照)

虐待かどうか分からず事故や病死として処理されるケースもあるため、実際の数はもっと多いだろう。児童相談所や警察が介入して、危険な状況から子どもを保護する仕組みは大切だ。

一方で、子どもが保護されても、親や保護者が変わらなければ、また同じような虐待や不適切な養育は繰り返される。児童相談所が関与し一時保護したが、家庭に帰された後、虐待がエスカレートし亡くなってしまった事件は後を絶たない。子どもの放置死(ネグレクト死)も依然としてある。

家庭が安全で安心な場所にならなければ、子どもは帰っていけないのだ。しかしこの国でその問題はいつも後回しにされてきたように思う。子どもがこれ以上傷つけられることなく、子どもの生きる力を回復していくためにも、親が自分自身のセルフケアと問題解決力を身につけられるよう、その力の回復を求めていくマイツリーのようなプログラムが社会には必要だ。

文=矢嶋桃子

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