ハイエンド・ブランディング・プロデューサー


ファンを増やし、国力を高める手段


ハイエンドトラベルを推進すべきもう一つの理由が、外交戦略としての観点です。

中国に依存していた日本の経済、観光は、新型コロナウイルスの出現で混乱しました。そしてウィズコロナ、ポストコロナでは、観光への嫌悪、逡巡も生じると予想されます。他にも紛争、自然災害など旅をめぐる障壁がいつ起きるともわからない中、観光政策もターゲットを分散したポートフォリオを組むことが重要です。

アメリカ、フランス、イギリス、オーストラリアなど自由、民主を標榜する国や、個人GDPが一番高いドイツ語圏、そして台湾、香港、シンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイなどの親日アジアの国々。これらの国のトップ層を「日本ファン」にすることは、国のイメージアップや経済の活性など国益にもつながります。

よってハイエンドトラベルの推進は、単に観光収益をあげる経済政策だけでなく、日本の外交戦略、国力を高める次なる手段と捉えるべきなのです。

インフラの整備が急務


とはいえ、入出国管理や移動環境の整備、地方の宿泊施設やガイドの不足など、ハイエンドトラベラーを受け入れるためのインフラ整備が、日本はまだまだ追いついていないのが実情です。

一例を挙げれば、スーパーヨットが日本を旅する時、陸を離れると出国扱いになってしまうため、移動する度に出入国審査を繰り返さねばなりません。海外ではほとんどの国が、最初と最後の出入国審査だけです。このため、日本は面倒な国と見られており、スーパーヨット客が訪日を躊躇してしまっていると聞きます。

国内をヘリコプターで移動しようとしても、多くのヘリポートが緊急用、医療用に指定されていて、着陸できるポートが少ないのも難点です。

さらに地方では、いまだに多くのサイトでクレジット決済ができないなど、トラベラーに不要なストレスをかけており、これらの煩わしさが地方をより遠い存在にしてしまっています。

このように細かいシミュレーションに基づいたカスタマーサービスができていないことの根底に、世界の最先端に追いつこうという意識の欠如があるように思います。モータースポーツで培われたテクノロジーや素材が市販車に応用されたように、ハイエンドトラベラーの目線に合わせて上質でユニークでストレスフリーなコンテンツやサービスを開発することが、一般向けサービスの向上につながります。

日本はもともと経験から学んで標準化していくことを得意としています。戦国時代にポルトガルから鉄砲が入ってきた時も、自分のものに消化して改良し、国中に広めたのがいい例です。ハイエンドトラベラーの受け入れを契機に、ハイエンドマーケットの分析を行い、そこに日本が後れをとっている産業分野を洗い出して見直し、おもてなしの心と合致させて日本独自のハイエンドな価値を創造していく契機としていきたいですね。

文=山田理絵

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