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2017年中国北京にて(Thomas Peter-Pool / by Getty Images)

米国が“経済版スプートニク・ショック”に見舞われたのに、ホワイトハウスがそれに気づかなかったらどうなるか?

残念ながら、これはもはや修辞的な疑問というよりも、文字通りの疑問になっている。

たしかに、米国にとって衝撃的な出来事があったときに、それをソ連による1957年の人工衛星打ち上げになぞらえるのは、一種のクリシェ(決まり文句)になっている。とはいえ、石炭産業の復活を叫ぶドナルド・トランプ大統領を尻目に、中国政府が5Gをはじめとする技術に旺盛な投資をしていること自体、米国にとって「国家の非常事態」なのだという、エコノミストのリチャード・ダンカンの指摘には、やはり一理ある。

「今の傾向が続けば、中国がもうじき米国を追い越して世界一の技術・経済・軍事超大国になるのは不思議でも何でもない」とダンカンは言い切る。そのうえで、こう提言する。「米国がグローバルな優位性を保つ方法は1つしかない。中国よりも多く投資することだ」

では、米国はどれくらい投資すればよいのか。ダンカンの見積もりでは、10年でおよそ8兆ドル(約860兆円)ということになる。優先すべき投資対象としては、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、遺伝子工学、グリーンエネルギー、ナノテクノロジー、神経科学、量子コンピューティング、ロボティクス(ロボット工学)を挙げる。

もちろん、これは途方もない額である。ただ、トランプが2017年1月以来、中国に地球最大の経済大国の座を射止めやすくしてきたのも確かなのだ。

巷では、トランプは米国のこれまでの指導者とは異なり、中国に強硬な姿勢で臨み、公平な競争条件を整え、米国の労働者に勝利をもたらしているなどと語られる。そうした話は、関税のような武骨な手法で経済の潮流を変えられた1985年なら真実だったかもしれない。だが、2020年の現在は、そうした昔ながらのやり方の貿易戦争では、同時に経済力を高めていかない限りうまくいかない。トランプがどんなに強い指導者を演出してみせても、実際は彼の危機感のなさのせいで米国の優位は揺らいでおり、中国はここぞとばかりに奮起している。

もちろん中国も、成長の鈍化や債務の膨張、自ら選んだ、香港をめぐる地政学的な対立をはじめ、厄介な問題を抱えている。しかし、中国政府は米政府と違って、マルチタスクで事を進めている。習近平国家主席は、今年の経済成長のてこ入れに取り組むと同時に、この10年の戦略である「世界一になること」への投資も行っているのだ。

編集=江戸伸禎

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