I study technology disruption in individuals, companies and societies.

Photo by Noam Galai/Getty Images

今月上旬、新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)により大きな打撃を受けている世界最大の映画館チェーンAMCがアマゾンへの身売り交渉をしているとの情報が報じられると、AMC株は30%上昇した。

現時点で49億ドル(約5300億円)の負債を抱えるAMCの経営状態は以前から疑問視されており、破綻も時間の問題だとするアナリストもいた。つまりアマゾンは、AMCに救いの手を差し伸べるホワイトナイトとしての立ち位置を得ている。アマゾンは2017年6月、ホールフーズを137億ドル(約1兆4800億円)で買収しており、AMCの時価総額が5億ドル(約540億円)に満たないことも臆測の要因となっている。

今のところ全ては臆測に過ぎないが、アマゾンが世界最大の映画館チェーンを買収するメリットは何なのだろうか? 第一に、アマゾンは既にプライム・ビデオを通じて多くのコンテンツを製作しており、それを上映する施設を買収するのは理に適っている。

米国では数カ月前まで、映画製作会社が映画館チェーンを傘下に置くことは独占禁止法で禁じられていた。つまりバリューチェーン全体を1プレーヤーが独占することはできなかった。しかし米司法省は昨年11月、複雑化が進む現状と、ストリーミング企業などの新業態の登場を受け、1940年代から続くこの規制の改正を発表した。

アマゾンやネットフリックスなどの企業が製作するコンテンツは、映画館で上映されない限りアカデミー賞などの賞レースから除外されることも重要な点だ。そうした企業が世界最大の映画館ネットワークを傘下に置けば、容易に回避できる障害だ。さらに、「うちと契約すれば、あなたの作品をまず傘下の映画館で上映し、さらにプライム・ビデオでも提供できる」という誘い文句でクリエーターを囲い込むこともできるだろう。

一方でアマゾンのようなデジタルチャネル大手が実店舗に興味を示すのは今に始まったことではない。アマゾンは既に7種類の実店舗を展開している。

編集=遠藤宗生

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