I write about security and surveillance.


普及は難しい


どの国家も、国民の60%に特定のアプリをインストールさせることは不可能だ。シンガポールですら、国民の3分の1にインストールさせるのが精一杯だった。最近実施された調査によると、米国民の多くは接触追跡アプリの効果を疑問視しており、プライバシー保護の観点からこうした技術には賛同していないという。

全ての人がアプリをインストールし、アプリが想定通り機能したとしよう。ユーザーの年齢や健康状態に基づき、アプリ上に色のついたQRコードが表示される。緑色のQRコードは自由に行動できることを意味するが、症状のある人と接触した場合、その人の検査結果が出るまではQRコードの色が赤に変わり、自主隔離をしなければならなくなる。こうした仕組みは技術的に可能でも、実際には不可能だと言えるだろう。

接触追跡アプリの導入を検討している国は、人々の行動や社会基盤の変化を想定しなければならない。中国やシンガポール、韓国などの事例を見れば、感染経路の追跡が重要であることは明白だ。一方で、中国ですらスマートフォンにのみ依存した感染経路の追跡は困難であることも明らかになった。接触追跡には自動化できない要素が多い上、ユーザーのコンプライアンスに対する依存度が極めて高いのだ。

それでも、接触追跡アプリの開発は急ピッチで進んでおり、この1カ月で多くのアプリがリリース目前までこぎつけている。しかし、アプリに過大な期待を寄せる各国政府が直面する課題は明白だ。

アプリが想定以上にインストールされることは考え難く、警報に従う人の割合は少ないだろう。ロックダウンが解除されれば、「感染しているかもしれない」という警報が届いても、自主隔離に従わない人が大半だろう。国民に導入させることの難しさを、各国政府は思い知ることになるはずだ。

編集=上田裕資

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