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今シーズンに限りチームの降格なしを決定


2014年2月に第5代チェアマンに就任した村井氏は、キャリアのなかでJクラブの社長を務めた経験のない、外部からの招聘(しょうへい)だった点で、これまでとは一線を画す存在となった。サッカーの経験も埼玉県立浦和高校時代の3年間だけだった。

再びサッカー界との接点が生まれたのは2008年7月。代表取締役社長を務めていたリクルートエイブリック(現リクルートキャリア)が、Jリーガーのセカンドキャリアをサポートする事業を請け負っていた縁で、3期6年にわたってJリーグ理事の1人に名前を連ねてきた。

「いまの正直な気持ちはJリーガーでもなく、Jクラブの経験もない私をチェアマンに選ぶJリーグのオープンさ、懐の深さにただただ驚いていることです。最初に打診を受けたとき『これは大変だ』というのが偽らざる気持ちでした。ただ、1人のビジネスマンとして人材育成に取り組んできた30年間で常に『逃げちゃダメだ』と言い聞かせてきました。それを振り返ったときに、この話からも逃げてはいけないと。命を賭して、人生を懸けてでもお受けしようと思った次第です」

就任会見で見せた柔らかい物腰と、裏表のない誠実な行動力はいまも変わらない。早稲田大学法学部を卒業した1983年に日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)に入社。1988年から人事畑を歩み、2000年からは人事担当の執行役員を務めてきたなかで、揺るぎない「議論を尽くす」という哲学を抱くに至った。

「トップがしっかりした方針を示して、従業員やお客様にそれを伝えて、オープンに話をしてベクトルをそろえることができれば、組織は必ず力を発揮すると確信しています。私の姿勢はコミュニケーションです。徹底して丁寧に話を聞いて、伝えるということです。最後に決めなければいけないときに決断を下すのが私の立場だと思うので、議論を尽くした後に最後は私が決めることもあります」

村井チェアマンが抱く哲学は、今年3月から4期目に入っているいま現在も実践されている。

通常はカテゴリーごとに月例で開催している実行委員会を、J3を含めた合同ウェブ会議の形で頻繁に開催して「議論を尽くす」。終了後には必ずオンライン形式でメディアブリーフィングを開催し、決定事項をオープンにしてきた。

実行委員会における村井チェアマンの発言録や、新型コロナウイルス対策連絡会議のレポートも、公式ホームページ上で随時公開されている。言うまでもなく、Jクラブ関係者やJリーガー、ファンやサポーター、そしてスポンサー企業まで、現状に対する認識を共有するためだ。

一連の実行委員会では今シーズンの特例として、カテゴリー間で「昇格あり、降格なし」とすることを決めた。競技上の公平性が保たれない可能性を踏まえて、最大のリスクとなるチームの「降格」を事前に排除したのだ。

「我々としては目標に向かって選手たちが頑張っていく姿を推奨したいし、結果を残した選手たちに対しては報いていきたい。だからこそ、こういう状況のなかでも頑張った象徴となる昇格は残し、ある意味で競技結果に対する大きな罰則ともとらえられる降格は、今回は保留しようということになりました」

特例を設けた理由を村井チェアマンはこのように説明する。

文=藤江直人

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