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Forbes JAPAN 編集部 編集長


業界の常識を覆した3つの要因


一つは、機械化による生産スピードの高速化だ。ラインを止めずに試作開発と少量多品種の生産を行った。機械化により人間には覚えきれないことがコンピューターによって整理されていった。大量の生産を可能にしたのだ。

次に、常に試作開発を行っているため、毎年、新製品を出すことができる。医師の間で評判になり、展示会では常にブースに黒山の人だかりができた。すると、さらに医師の要望が集まった。医療が高度化していくと考えていた高山氏にとって、最先端の技術が常態的に入り、試作とともに自社の技術も常にトップレベルになる。

そして最大の要因は、最初に出会ったのがプロ中のプロである「匠の手」こと脳神経外科の上山博康氏だったことだ。上山氏と共同開発し、高山氏自身も医学書を読み、手術に立ち会い、試作を行った。こうして「医師の負担を減らして命を救う道具」を次々と開発。特に、なぎなた型の刃をもつ手術用ハサミ「上山式マイクロ剪刀ムラマサスペシャル」は代表作となり、国内のシェア9割を占めるようになった。

つまり、トップとともに開発を行うことで、それがモデルとなり、フォロワーたちに一気に広まる。「トップモデルによる標準化」を可能にしたのだ。

「世界で闘う方法として、私は量産化ができれば、次に臨床技術が優れたドクターが私を海外に連れて行ってくれると漠然と考えていました」と高山氏が言う。その人物が現れた。上山氏の弟子である脳神経外科医の谷川緑野氏である。

谷川氏がヘルシンキ大学に招聘されて手術を行った。その時に手にしていたのが高山氏の開発による器具である。すると、世界的権威である医師たちがそれを見て、彼の器具を使いたいと言いだしたのだ。こうして北米、南米、欧州、アジアと一気にシェアを広げていった。トップクラスの名医とパートナーとなることが、最高の標準化をつくり上げたのだ。 

「こうやってリクエストが来るんですよ」と、高山氏がスマホを見せてくれた。メッセンジャーで、チリ大学の権威が写真とメッセージを書いて送ってきている。ある時はパリ大学から、またある時はアメリカの著名な病院からスマホでリクエストが来る。「僕の方からも発信できるし、世界の名医からも連絡が来るし、便利になりましたよね」と笑う。このリクエストを図面化して工作機械で作業を始めていく。

「僕がやっていたことは、21世紀に間に合いました。工作機械による機械化をはじめ、ちょっとでも遅かったら、こうはなれなかったと思います」

実はこうしたトップクラスをパートナーにした標準化は、他のスモール・ジャイアンツにも存在する。八王子にあるエリオニクスは、微細加工装置や計測・分析装置の製造会社で、ハーバード大学や東大など世界中のトップクラスの大学やソニーの研究所などをパートナーにしている。最高水準の研究者と対等な関係を構築しているため、ともに進化を続け、フォロワーの大学や企業が同社の製品を使用する。

──誰と組むか。あらゆるヒットは組み合わせで決まる。バディ(相棒)は誰か。バディと生み出したものを標準化できるか。世界制覇のポイントはそんなところにある。

ウェブ電通報「日本の中小企業に必要な「バディの法則」って何だ?」より転載

文=藤吉雅春、写真=吉澤健太

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