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世界を目指す「社内発イノベーション」事例


厳正なる書類審査、面談選考を経て選ばれた5社がインキュベーションに進み、帝人ファーマから“伴走者”として社員を各社に配置。メンタリングするにあたり、我々は帝人ファーマとスタートアップへの介入のタイミングと深さを心がけた。

オープンイノベーション型のアクセラレータープログラムを始めると、スタートダッシュと追い込み型のチームに分かれる。前者の場合、大手企業側に先入観があるケースが多い。ましてや異業種同士となると、スタートアップの考えや文化に慣れるまで時間を要することから、伴走者とじっくり話し合い、体系知識等のインプットに力を注いだ。

後者については、初めこそ大枠でも進められるが、後半にかけて双方思惑が出てくる。ここでズレが生じることのないよう、スタートアップに帝人ファーマの意図を伝え、互いに歩み寄るタイミングを重視した。また2025年問題を意識すると言いつつ、近視眼的な目標での事業に落ち着くケースも散見されたことから、ビジョン再考のタイミングも設けた。

伴走者はスタートアップとの協業に慣れていないことからコンフリクトが生じやすく、本業もあるなかでの焦りや戸惑いは明らかだったが、丹羽氏は、あえて彼らを突き放す作戦で鼓舞した。

変化は徐々に現れた。それまでどこか控えめだった伴走者が自身の想いを発するようになり、しかもスタートアップ寄りの視点になっていた。DemoDayを1週間後に控えたリハーサルで指摘された多くの課題に対し、スタートアップと伴走者は時間の許す限りブラッシュアップに努めた。惜しくも選ばれなかったスタートアップと切磋琢磨していた伴走者は、受賞に至らなかった理由を知ろうと我々に詰め寄り、悔しさをあらわにした。


DemoDayで伴走者もスタートアップと共に登壇し、経営陣を含む審査員からの質問に応じる場面も

プログラムを経て、経営層が「よかった」と労いの言葉をかけるなど、社内の反応も前向きなものに。「関係外の部署からも途中から『何か手伝えることはないか?』と連絡が来るようになっていました」と中川氏は話す。

「日本でのスタートアップとの取り組みはチャレンジでした。本当に必要な事業は何で、価値を見出すにはどうしたらいいかをスタートアップと社員が真剣に話し合ってくれたことに感謝しています」

社外の反応も変わった。「アクセラレータープログラムを来年もやるんですか?」と今回未応募のスタートアップから聞かれるようになったという。着実に認知度は上がってきている。

今後、帝人ファーマは選ばれた3社を中心とした選抜企業5社と事業化フェーズに入るが、“スタートアップファースト”は維持したままだ。「事業開発でできたものへの権利は対等で検討しています。互いに汗をかいたところは両社でやっていくべきもの。共同研究や共同開発で進めて、事業提携や出資などがよければその選択肢もあると思います」と丹羽氏。


DemoDay時の集合写真

最後に、丹羽氏に在宅医療分野で海外展開があるか尋ねると、「在宅医療は国毎の商習慣や規制が深く絡むので、機器や医薬品と違って海外への導出は簡単ではありません。日本は高齢化社会における課題先進国。在宅医療は人もしくは人を感じさせるサポートが重要と捉えていますが、ホスピタリティという観点で世界に誇れるサービスを提供できると確信しています。国内で基盤を築いて、海外にも横展開していきたいですね」という。

日本をはじめ、世界に「5Sの精神」が広まる日はそう遠くないかもしれない。

文=佐藤 奈津紀

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