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居場所ハウスの食堂

“Ibasho report”をご存知だろうか? Ibashoとは日本語の「居場所」のことで、国際NGOや世界銀行が国連防災世界会議に合わせてレポートを発表。その反響は大きく、フィリピンやネパールでプロジェクト化に発展した。

では、Ibasho reportが紹介した「居場所」とは、どこかというと、岩手県大船渡市にある。ここに世界中から大勢の人が見学や視察にやって来る。その名も「居場所ハウス」。実は食堂である。世界で反響を呼ぶ食堂とはどんなところなのか。さっそく私は現地に向かった。


「お姉さん、お昼をご一緒に」

大船渡市は、東日本大震災で主な生業だった漁業が深刻な被害を受け、多くの若い人が町を離れた。人口は1985年をピークに現在は3分の2まで減少した。そこにつくられた「居場所ハウス」とは、震災後の地域復興の拠点として、特に高齢者の地域での暮らしを大切にするための場所である。

発端はアメリカ在住の日本人女性・清田英巳さんが始められた“Ibasho”という非営利のプロジェクトだ。高齢者が「お世話される弱い立場」という認識を変え、何歳になっても自分にできる役割を担いながら、自分たちの知恵と経験を活かし、支えあえる身近な場所を地域の人たちの手でつくっていこうという取り組みだ。

建物はアメリカの企業から支援を受け、陸前高田にあった古民家を移築・再生して使い、建築家でもある清田さんの知見が発揮された、とても開放的なしつらえになっている。

私が居場所ハウスに到着したのは朝の10時ごろ。早速、併設された食堂のキッチンをのぞくと、お昼ごはんの仕込み中だったおばあちゃんたちが、ふらっと入ってきた私に「郷土料理は食材の生かし方さえ知れば大丈夫」などと話しながら、野菜たっぷりのおひたしや佃煮のつくり方を教えてくれる。


これだけのボリュームでワンコイン

ここではうどん、そば、カレーライス、焼き鳥丼といったメインメニューに、畑で採れた野菜を使ったお惣菜の小鉢が5つも付いて500円。お昼の時間になると、1人でぽつんとしていた私の横に91歳のおばあちゃんがちょこんとすわり、「お姉さん、お昼一緒に食べようよ」と声をかけてくれたり、午後は元気なおじいちゃんと野菜談義で盛り上がり、畑にある大きなカボチャをおすそ分けしてもらったり。

一日中誰かが声をかけてくれて、全くひとりぼっちになる時間はない。

高齢者だけでなく、若い世代の利用もあり、私と同世代の人が仕事の途中でお昼を食べに寄ったり、Wi-Fiがつながるので子どもたちがゲームをしに遊びに来ることも。

「うちでやっていると親に怒られるけど、ここだと思い切りできるから」という今どきの子どもらしい理由だが、高齢者が子どもたちからSNSの使い方を教わったりと、ここでも世代を超えて、お互いにできることで支え合っているようだ。そんな空間で、私は1日中本当に心がポカポカし、早くもまた来たいなぁという気持ちでいる。

文:小竹貴子 構成:加藤紀子

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