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ナイキのCEO マーク・パーカー / Getty Images

かつては無敵で傲慢、自己中心的で高給取りだった最高経営責任者(CEO)は今、失職を恐れる日々を送っている。企業幹部向けコーチングサービスを提供する企業チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス(Challenger, Gray & Christmas)によると、米国では今年、過去最高ペースに当たる約1160社でCEO退任がこれまでに発表された。

退任理由はスキャンダルや業績低迷、トップにいる間に退任しようという動機、引退、経営陣刷新の必要性など多岐にわたる。CEOの退任にまつわるプレスリリースは、退任するCEOや企業のブランドイメージを守るため前向きな視点で書かれていることが多いため、本当の理由を知るには少し調査が必要だ。

米大手企業では今週だけでも、ナイキのマーク・パーカー、アンダーアーマーのケビン・プランク、ボーイング民間航空機部門のケビン・マカリスターの3人が退任を発表した。

エール大学経営大学院のジェフリー・ソネンフェルド上級副学部長は「CEOは現在、短い手綱でつながれている。賛美や弁舌の内容が現実と合致しない場合、CEOに責任を取らせるよう求める圧力が取締役会にかかる。人は上向きの状態にある間に離脱したいものだ」と述べた。

要因は他にもある。ベビーブーム世代のCEOは高齢化が進み、引退の準備をしている。こうしたCEOは会社経営から離れてストレスが少ない会長職に移行することが多い。ヘッジファンドなどの“物言う株主”や、買収可能な企業に目を光らせる未公開株式投資会社の台頭に加え、メディアのCEOに対する視線が厳しくなり、ソーシャルメディアでの反発も強まっている。

株式市場は上げ相場が長く続き、経済も堅調であることで、一部のCEOは会社が好調な間に自らトップを退き、大量の持ち株を売却することを選ぶかもしれない。

ナイキは、同社を13年間率いてきたマーク・パーカーCEOの退任を発表した。現在64歳のパーカーは1979年にナイキに入社し、2006年にCEOに任命された。後任は、ナイキの取締役でクラウドコンピューティング企業サービスナウ(ServiceNow)CEOのジョン・ドナホーだ。パーカーは取締役会長に就任する。ナイキは2年前、パーカーが「2020年以降も」CEOの職にとどまると説明していた。


ジョン・ドナホー(Getty Images)

パーカーはここ数年、いくつかのスキャンダルを経験してきた。米プロバスケットボールNBAのヒューストン・ロケッツでゼネラルマネジャー(GM)を務めるダリル・モリーの香港関連ツイートが引き起こした騒動では、ナイキが多くの広告やスポンサー契約を通じてNBAを実質的に牛耳り、中国にNBAへの影響力を行使させていることが露呈した。

また、性差別や妊娠したプロスポーツ選手への劣悪な待遇、男性中心的な風土といった疑惑を巡って訴訟も起きている。ただ、パーカーは自身が辞任を強いられたとの見方を否定している。

編集=遠藤宗生

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