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AI通信「こんなとこにも人工知能」

whiteMocca/Shutterstock.com

自閉症など発達障害を抱えた人々を積極的に採用し、売り上げを劇的に伸ばしている韓国AIベンチャーがある。人工知能(AI)を学習させるデータや、ソフトウェアのテストサービスを提供している「テストワークス」という企業だ。自閉症を抱えたスタッフたちは、そこでAI学習用のデータ加工に従事しているという。

一般的に、自閉症など発達障害を抱えた人々は、コミュニケーションなど対人関係、また社会性の理解や調整が苦手な一方、視覚的なタスクにおいては無類の集中力を発揮するとされている。そのモノゴトに対するデリケートな感覚は、AI学習用データを加工する作業においては強みになるのだそうだ。テストワークスのCEOであるユン・ソグォン氏は、現地メディアの取材に対して次のように話している。

「(加工作業を)反復的に、また愛着を持って細かくこなす。データの質が高く人工知能の学習がとてもうまくいく。発達障害を抱えた人々が、大きな成果を出せる分野だということを発見した」(ユンCEO)

そもそも、韓国では発達障害を抱えた人々の雇用を拒否する企業が非常に多いとユン氏。発達障害に対する漠然とした拒否感、差別というようなものが明らかにあると感じていたそうだ。そこで、クライアント企業と発達障害を抱えた人々が対面せずにこなせる業務を模索。AI学習用のデータ加工という答えに辿りついた。

多分に皮肉な話ではあるが、韓国企業の先入観や偏見が発達障害を抱えた人々の新たな仕事を発見する契機となったのだ。

なお、「発達障害を抱えたスタッフで構成されたAIデータチームの利益率は、私たちの他のどのチームよりも高い」とユン氏は言う。つまり、障害を抱えていない人々より生産性が高いというのだ。2017年に6億ウォン(約6000万円)に過ぎなかった会社の売上高は、2019年には50億ウォン(約5億円)に達する見込みだと同社関係者は取材に答えている。

テストワークスは、発達障害を抱えた人々だけでなく、結婚・出産でキャリアを断絶されることを余儀なくされてしまった女性など、社会的に弱い立場の人々がAI産業において活躍できるよう独自のスマートワークプラットフォームも用意している。8月上旬には、準政府機関である韓国情報化振興院の「スマートワークサービス拡散支援事業」を推進する企業にも採択された。

社会的弱者がAI時代に取り残されてないためにどうすればよいか。目下、世界中で起きている議論であるが、テストワークスのアプローチは有益なケーススタディのひとつとなるかもしれない。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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