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ライアン・ウィリアム

PICK UP1. CADRE

規制に守られた金融業界に、続々とIT業界発のスタートアップが押し寄せている。 そうしたなか、伝統的な金融企業からも殻を破ろうと起業家たちが生まれている。


2018年冬、AP通信はイバンカ・トランプとその夫ジャレッド・クシュナーが「オポチュニティ・ゾーン」と呼ばれる不動産税優遇策から個人的に利益を得る可能性があると報じた。

この施策は、合衆国大統領でもある父親に対し、夫妻が顧問として勧めたものだった。広く読まれたこの記事で彼らの最初の一手として挙げられていたのが、不動産業スタートアップ「カードレ」に対するクシュナーの投資だ。最新の連邦財務情報の開示資料によれば、その持ち分は5000万ドルにも相当する。

ニューヨーク・マンハッタンにあるカードレの本社から発せられるうめき声は、ホワイトハウスまで届きそうなほどだった。「いらだちや懸念を感じないと言ったらウソになるでしょう」と、カードレのCEO兼共同創業者であるライアン・ウィリアムズ(30)はなるべく感情を抑えて語る。

「(クシュナーとのコネのために)僕らとは仕事をしないという人々がいることは承知しています。だけどウチの会社には80人以上も投資家がいます。ジャレッドは経営的な支配権を持たない、物言わぬ投資家の1人に過ぎません」

従業員たちは開放的な広いオフィスで仕事に励み、自社サイトの保守管理に当たっていた。

そのサイトでは投資家たちが、動画や地図、テナントのリスト、各種データを書きつらねた長いメモなどを参照しつつ、マンションやオフィスビルの詳細を見ることができるのだ。

だがウィリアムズはその問題に取り巻かれてもいる。トレンディなノリータ地区に立つ由緒あるパック・ビルディング内にあるそのオフィス自体、ジャレッドが大統領顧問としてホワイトハウス入りするまで共同経営していたクシュナー社の所有物だ。ウィリアムズはジャレッドや、その弟のジョシュア・クシュナーと共にカードレのコンセプトを育てあげた。会社の立ち上げの時期に全員にコーヒーをおごった程度の人間が「共同創業者」を名乗ることもある現在のスタートアップ事情に鑑みれば、クシュナー兄弟はどちらもその肩書を得る資格が十分にあると、ウィリアムズもかつて語っている。

カードレのプラットフォームを使って不動産投資を行う大物の多くは、ジャレッドの紹介でやって来た者たちだ。ジョシュアのベンチャー投資会社「スライブ・キャピタル」は、初期の段階で重要な出資を行った。さらにジョシュアはカードレの取締役会にも名を連ね、2階上のフロアで仕事をしている。言い換えるなら、カードレの社名をクシュナー家から切り離すことは極めて難しい。

文=ネイサン・ヴァルディ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

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