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2017年3月には予約サイトのブランド名を従来の「空旅.com」から、現在の「Air Trip(エアトリ)」に変更する。その際、イメージキャラクターに人気コメディアンのオリエンタルラジオを起用して、テレビなどで大量のコマーシャル(CM)を打ち、話題となった。

OTAは消費者に知られなければ、存在しないのと同じ。どんな良い旅行商品を取りそろえても、なかなかビジネスに結びつかない。同社は下積み時代に、それをいやというほど思い知らされた。だから、ブランドイメージを一新したのを機に、派手なCM戦略で消費者の認知度を引き上げようとしたのである。

もちろん、CMの大量投入も「エアトリ」の認知度向上に貢献はした。が、競合する大手OTAも積極的なCM展開をしており、なかなか頭一つ抜け出すことができない。CMは「やらなければ知られないままだが、やったからといって広く知られるわけではない」ものなのだ。

ところが、ある出来事が「エアトリ」の認知度を一気に引き上げる。それは、またしても同社が仕掛けたM&Aだった。

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格安だった「DeNAトラベル」の買収

それは、2018年5月のOTA大手「DeNAトラベル」買収だ。当時、DeNAトラベルの旅行取扱高は555億円で国内14位、エアトリは403億円で20位。有名企業DeNA傘下の企業が対象だったことや「小が大を飲む」買収だったこともあり、報道で大きく取り上げられることになった。

しかし、最もOTA業界を驚かせたのは12億円という買収価格だ。OTAは今後の成長が見込める分野であり、企業価値は高騰している。2003年9月に楽天が買収したホテル予約の「旅の窓口(マイトリップ・ネット)」は323億円、2016年2月にヤフーが買収した高級ホテル予約の「一休.com」は約1000億円、同12月に中国のシートリップが買収した旅行料金比較サイトの英スカイスキャナーに至っては約2000億円もの値がついた。

海外航空券予約に強みを持ち、知名度もそこそこあるDeNAトラベルを12億円で買収したエボラブルアジアの手腕は驚くべきものだ。が、同社にはM&Aを有利に運ぶノウハウがあった。実は同社は約40社ものベンチャーに出資している。OTA以外への出資は純投資で、2018年3月には投資先の着物レンタル企業「和心」が東証マザーズに上場している。

同社の投資事業は順調で、同事業で得た利益をエアトリの広告費に回しているという。投資事業で培った選択眼と交渉力が、DeNAトラベルの格安買収につながった。DeNAトラベルは2018年3月期決算で19億円の営業赤字を抱えていた。そこが低価格買収のカギだったようだ。

DeNAトラベルを完全子会社化したことにより、エアトリは国内OTAのトップスリーに食い込んだ。さらに赤字だったDeNAトラベルは、クレジットカード会社や広告代理店向けの手数料など取引条件の好転、顧客の相互送客、人材の補完、システム投資の効率化などを通じて、経営統合からの4カ月間で営業黒字に転換した。買った方も、買われた方もプラスに働くM&Aになったのである。

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従来の強みだった国内航空券予約に加えて、旧DeNAトラベルが得意とする海外航空券予約を強化した「エアトリ」(同社ホームページより)

M&A巧者の「次の一手」は?

とはいえ、OTAの競争は激しくなる一方だ。エアトリが強いといわれている国内航空券でも市場シェアは3%程度。米エクスペディアやシートリップなど海外の多国籍OTAが日本市場に触手を伸ばし、LINEやDMM.comなど異業種からのOTA参入もある。国内トップ3に入ったからといって、安穏とはしていられない。

エボラブルアジアは、さらに新たなM&Aを仕掛けて事業規模と知名度を拡大していくだろう。市場競争が激化すれば、単独で生き残れないOTAも出てくるはずだ。「M&A巧者」の同社が、どのような買収を進めていくのか。またも「あっと驚く」M&Aが待っているのかもしれない。

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文=M&A Online編集部

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