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──小林さんの暗黒期とはいつのことですか。

国立大学の付属高校に入学しましたが、成績がふるわず高校1年でやめました。留学先では、ほとんど英語がわからずに学業面でもスポーツ面でも活躍できず、全くいいことがありませんでした。挫折して、傷ついて、アイデンティティを見失いかけた時期です。しかし、それを経験したからいま、苦労している人、うまく自分の意見を言えない人の痛みや苦しみが自分のことのようにわかります。それは、それまでの私に欠けていたことでした。

その次がベンチャー時代です。新卒で入った投資銀行のモルガン・スタンレー(当時)を2000年にやめてベンチャーに入りました。社会人3年目から5年目までのころです。転職した直後にITバブルがはじけて、赤字続きで、資金調達もままならない。最悪のタイミングに転職してしまいました。営業に行っても、前職と異なり誰も知らない会社の名刺だとなかなか会ってくれません。

そんななかで、何者でもなくなった自分を評価して会ってくれる人たちが徐々に出てきました。また、そのベンチャーで働いていた高卒や中卒の従業員の心の豊かさや優秀さにも驚かされました。学歴はこんなにも意味がないのかと思ったんです。人を学歴や職歴、社会的な肩書きなどで判断するのは絶対やめようと思いました。人生で一番大変だった時期に学んだ二つのことは、人生の指針になりました。

──ISAKには世界中から優秀な生徒が集まっています。

よく富裕層のエリートが集まる学校だと勘違いされますが、豊かな先進国だけでなく、ベネズエラやソマリアなど政情不安な国や貧しい国も含め、73の国と地域から190人が来ています。ふるさと納税や寄付をもとにした奨学金制度があり、約7割の生徒が給付型の支援を受けています。

大きな転機は2017年のUWC加盟です。UWCは世界で選抜された高校生を育てる国際学校の集まりで、ISAKは17番目に加盟した日本で唯一のUWC校です。アジアだけでなく世界中から優秀な生徒たちが集まるようになりました。教員33人、職員37人、理事と評議員30人の大人計100人ほどが関わっています。開校から5年の学校としては、一定の結果を出しつつあると思います。

──いま、わくわくする瞬間はありますか。

6月に第三期生の卒業式と初めての同窓会をやりました。一期生と二期生の100人中、約30人が世界各国から駆けつけてくれて、感動しました。卒業生を見て熱くこみ上げてくるものがありましたね。

1、2年前に卒業したばかりですが、大学に通いつつ政治家を目指しながら急成長のスタートアップでインターンしている子や、ギャップイヤーで韓国の社会問題の深層に迫るドキュメンタリーを作っている子、大学に行かずに起業している子もいて、本当にたくましいです。「ここでの3年間が自分を変えた。これがなかったら自分は絶対にこうなってなかった」と涙ながらに言ってくれた子もいて、やりがいを感じました。


UWC ISAK JAPANの卒業式の様子

構成=成相通子 イラストレーション=Willa Gebbie

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