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子どもに人気の玩具であるパズルブロック。その中でも、自分の頭でイメージした形を自由自在につくれる「LaQ(ラキュー)」は、想像力や思考力の発達を促す「知育玩具」として国内外で注目されている。開発したのは、意外にも外資や大手の玩具メーカーではない。奈良県吉野郡を本拠地とするスモール・ジャイアンツ、ヨシリツだ。


また例の「病気」が発症してしまったか──。営業回りの昼休みに立ち寄ったうどん屋で麺を啜りながら、吉條(きちじょう)宏はひとり悶々としていた。頭を巡っていたのは、道中にふと浮かんだ新たなアイデア。「六面嵌合(六面のどこからでも組み合わせられる)のブロックを開発すれば、いろんな形がつくれて面白いのではないか」というものだ。「病気」と思ったのは、ヨシリツ設立のきっかけであるオリジナル栓抜き「セントル」も同じくひらめきから生まれ、そして苦戦していたからだ。  

元々、家業の牛乳販売業を手伝っていた吉條は、不透明な先行きに危機意識をもち、全く別の新事業を探していた。ある日、晩酌の際にビール瓶を見つめ、ふと「蓋を簡単に開けられたら面白い」と思いついたのが「セントル」である。しかし、協力者を探したり、試行錯誤を重ねたりして、商品化にこぎ着けたのは10年後の1983年。そのうえ、飲料メーカーなどに営業しても、反応は思わしくない。時間は経つも一向に売れず。ブロックの着想を得たのは、そんな最中のことだ。  

話が動き出したのは、およそ3年後。薬品会社や電力会社に販促ツールとして受け入れられ、ようやく「セントル」が軌道に乗り始めた頃だ。「一つの会社から10万本を受注しても、来年も発注してくれるとは限らない。この商売だけを頼るわけにはいけない」と温めてきたアイデアの具現化に挑んだ。  

どんな形もつくれるブロックは、やはりなかなか完成しなかった。試作品を作っては改良の繰り返し。「普通は2年までが我慢の限界。3年経ったらあとは意地しかない。僕の場合は気性やね。一度それと思うと、できるまでやらな気が済まん」。開発を始めて5年が過ぎようとしていた。  

ある晩、炬燵の中で物思いにふけっていると、アイデアが浮かんだ。すぐに紙と鉛筆を取り出しスケッチをする。四角形、三角形のパーツと、それをつなぐジョイント部分。それらをハサミで切り取って重ねてみる。感触はばっちりだった。後日、試作化すると、平面から立体、球体まで、しっかりと組み立てることができた。執念が実った。

文=眞鍋武 写真=佐々木康

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