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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

pixinoo / shutterstock.com

ハリウッドの映画づくりは、映画を撮るよりも、すべての関係者と契約を結ぶことのほうが大変だと言われる。殊に最近では、映画をつくった以降のことに、契約内容の重点が置かれるようになってきた。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、俳優のウィル・スミスは、新作「キング・リチャード」の撮影契約について、60億円の出演料に加えて、「必ず全米の映画館での上映を実施するように」という項目と、「封切り後、90日間はいっさいストリーミングさせない」という項目を、絶対条件として提示して、譲らなかったと報じた。

ネットフリックスやアマゾンプライムだけでなく、ディズニーやワーナーブラザーズなどの映画界の巨人が独自のストリーミングの検討に入っているなか、「ハリウッド村」は、「劇場公開と個人観賞のバランスをうまくやらないと売り損ねる」という懸念を持つようになった。

巨匠マーティン・スコセッシ監督も、ネットフリックスの制作で映画「アイリッシュマン」(主演はロバート・デニーロ)を撮るにあたり、やはり大型劇場での上映を条件にした。ネットフリックスも、この条件を飲まないと、監督料や出演料の要求が跳ね上がると計算して、了承したという。

「アベンジャーズ」シリーズの製作費が毎回300億円を軽く超えるように、ハリウッドの映画製作費がますます高額になり、それゆえに、シリーズものの繰り返しや、売れるパターンの踏襲、著名な俳優へ過度な依存などの傾向となり、中堅どころの作品には、製作チャンスすら少なくなっている。

100万円でつくられたコメディ映画

一方で、ストリーミングの拡大は、いままでなら考えられなかったような超低予算映画へ門戸を開いたとされる。この二極化現象は面白い。

WSJによれば、「The Pastor and the Pro」という、たった100万円でつくられたコメディ映画(短編ではなく80分の作品)が、去年の冬、アマゾンプライムで、5カ月で約9万ビューの数字を稼いだという。

監督のマシュー・ウイルソンは、「10年前だったら大きなスタジオに買ってもらえなければ、まったく上映機会がなく、無視されるか、地方の映画祭で上映されて10人程度の観客に観てもらっておしまいだった」と、この二極化を歓迎している。

この作品は、ユーチューブで予告編を観ることができるが、プロの映画製作者がつくったクオリティであることは納得してもらえると思う。聖職者が恋に落ち、官能の誘惑に引き寄せられるというタブーを扱っていることもあり、テーマから忌み嫌う低評価者のために平均評価はぱっとしないが、少なくともアマチュアの映画を見せられたという感想はない。

文=長野慶太

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