ポリネーターが見る世界の景色


「ありえない状況」を生み出すエキスパートを増やす

さて、改めてワークショップの名称を見てみると「Improbable」という文字がある。「Improbable(インプロバブル)」とは「ありえない・起こりそうにもない」という意味で、実はこのワークショップを象徴する大事なキーワードである。

「Art Thinking Improbable」は数多あるアート思考ワークショップの中でも、「ありえない状況」を生み出すことに特化したワークショップなのだ。

このワークショップは3日間で、アーティストがモノを生み出す際のプロセスを6つのステップに分けて展開していく。



上の絵は、「ありえない状況」を確実に生み出すワークショップの72時間で、参加者が経験する6つのプロセス。貢献(DONATE)逸脱(DEVIATE)破壊(DESTROY)漂流(DRIFT)対話(DIALOGUE)出展(DISPLAY)というプロセスを経て、作り(MAKE)・批判し(CRITICIZE)・曝け出す(BE EXPOSED)のである。

通常のビジネスパーソン向けのワークショップと比べ、特徴的な点は3つ。

アーティストが講師であること、講義と手を動かすクリエイションが交互に行われること、そして、最終日の成果発表会に向けて作品を仕上げることだ。


ポンピドゥ・センター内、とある床を剥がすと講義スペースに変わる


ポンピドゥ・センターの床を剥がした講義ルームで行われる講義の様子

「ありえない状況」を確実に作る

なぜ「ありえない状況」をわざわざワークショップで生み出す体験をしなければいけないのか。カンファレンスのパンフレットの冒頭には、こう書かれている。

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なぜ我々は「ありえないものを生み出す」エキスパートになる必要があるのか?21世紀には「ありえないものを生み出す」ことに精通する必要がある。その理由は以下の通りだ。

・ビジネスの陳腐化を避けるため、企業は新しい「ありえない」ビジネスモデルを生み出す必要がある。
・AIやロボットと共創するためには予想できることは彼らに任せ、人間は「ありえないものを生み出す」エキスパートになる必要がある。
・環境問題など地球全体の危機を解決するために、我々はパラダイム・を変えるためにも「ありえない解決策」を設計する必要がある。
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過去のルールや慣習に則っているだけの「誰かが決めてくれたルール・ありえる状況」はAIやロボットが代替する。人間は「ありえない状況」を生み出し、過去や現在の常識に挑戦するアプローチが必要ないま。私たちは、「ありえない状況」を生み出すためのワークショップを学ぶ時代に突入したのである。

このワークショップは企業やノンプロフィット、ビジネススクール、そしてフランスでは軍学校(Ecole de Guerre)でも採用されはじめている。


床を剥がして出てきたスクリーンを活用して講義をするESCPのシルヴァン・ビュロー。Art Thinking Improbableの創設者の一人だ。

文=西村真里子

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