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I am an industry insider writing about fashion tech and sustainability

Andriy Onufriyenko

デジタル・ファッションが普及する上で、大きな一歩となる出来事があった。あるオークションで、史上初めてデジタル・ファッションが落札されたのだ。それを作ったのは、この分野のパイオニアである「The Fabricant」だ。
 
同社は、2Dや3Dのデザイン用ソフトウェアを用い、超リアルなデジタル衣類を作成している。The Fabricantはインスタグラムで人気のフィルター「Beauty3000」を制作したアーティストのジョハナ・ジャスコウスカ(Johanna Jaskowska)と、ブロックチェーンの人気ゲーム「CryptoKitties」を開発した「Dapper Labs」とコラボし、世界初のデジタル・クチュール「iridescence」を作成した。
 
Iridescenceは、5月にニューヨークで開催されたブロックチェーン関連のカンファレンス「Ethereal Summit」でオークションにかけられ、9500ドル(約100万円)で落札された。
 
しかし、一体どうやってこのクチュールを着るのだろうか? 落札者は28日以内に着用する人物の写真を制作チームに送り、その人物の画像に合わせてクチュールをカスタムフィットしてもらうことができるという。Iridescenceの特徴は、ブロックチェーンを用いたデジタル資産であるため、衣類であると同時に仮想通貨でもあるという点だ。
 
デジタル・クチュールは環境に負担をかけないメリットもあるが、別の視点からも大きな意味を持つ。デジタルネイティブな「Z世代」は、オンラインゲームやSNS上で複数のデジタルペルソナを作っており、人生の多くの時間をデジタルなコミュニケーションに費やしている。彼らは、素の自分を表現できる服装を好み、その1つのソリューションがデジタル・ファッションなのだ。
 
仮想収集品(crypto collectibles)の市場規模は、今年初めて2000億ドルを突破したという。The Fabricantによると、リアルなアパレル業界では、グローバル・ブランド各社がZ世代とのエンゲージメントを強化するため、こぞってデジタル・ファッション市場に参入しているという。
 
「デジタルとリアルの融合」が進む
 
こうした現象を象徴するのが、150万人のフォロワーを持つインスタグラマー「Li’l Miquela」だ。彼女はCGモデルであり、架空の存在だが、グローバル・ブランドの広告塔を務め、多額の報酬を得ている。他にも、「ASOS × Sims」や「フォートナイト(Fortnite)」などのゲームのプレーヤーは、コラボレーションを通じてカルトブランドのデジタル・ファッションを購入している。
 
今回落札されたデジタル・クチュールの正当性は、ブロックチェーン以外でも裏づけられている。制作に使われた2Dパターンは、実際の衣服を作る際に用いられるもので、オーナーが希望すれば、ファイルから実物を制作することができる。今後は、デジタルとリアルを融合させる動きが出てくるかもしれない。
 
史上初のデジタル・クチュールが落札されたことをきっかけに、今後ますますデジタル・ファッションが広まることが予想される。こうした流れを受け、インフルエンサーの世界でも、L’il Miquelaのような架空の存在が人間よりも影響力を持つようになるかもしれない。

編集=上田裕資

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