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フォーブスジャパン編集部

発酵デザイナー小倉ヒラク

発酵デザイナーという一風変わった仕事の道を切り開く小倉ヒラク。

2018年から19年春まで日本列島を巡り「全国発酵取材旅」を挙行。その集大成として「発酵」を切り口に各地の風土や味覚を紹介すべく、渋谷ヒカリエの「d47 MUSEUM」で発酵にまつわる展覧会を開催している。また、旅を記録した新著「日本発酵紀行」は一般発売前に重版が決定するほどの人気ぶりだ。

日本列島を巡る旅を通じて、小倉が直面した驚きの発酵文化とは。後半はインタビューをお届けする。



―まず、各地の発酵の郷土料理を探す旅を振り返って、全体的な感想を教えていただけますか。

2018年8月から8ヶ月間、全国各地を回ったのですが、全然家(山梨在住)に帰れませんでした。各地の山や離島などに行きましたが、正直なところ、明治時代以降の近代化によって、日本の中世以前の古層文化はかなり破壊されたことが分かりました。

「日本の伝統は素晴らしい」と言うけれど、僕たちは自分の手でかなり伝統文化を破壊してしまっている。だけど、今回巡った土地では、小規模でも必死に繋いできた人がいたり、ポツンと取り残されて忘れられている郷土食があったり。

完璧には消えてなくて、あるチャンネルにスイッチを入れると、掘り起こすことができる。その方法を学んでいきました。

―消えかけたものを掘り起こすためのスイッチとは。

地図を見て「ここに何かあるはず」と検討をつけて、その土地の人に声をかけるんです。

「古い街道沿いが残る町なら、かつて交易があったはずだから、きっと面白いものがあるだろう」とか、そんな感じです。旅の間は、毎晩グーグルマップを見まくりでしたね。寝転びながら、山や川など地形を見ていました。

日本の地域文化って、地形が鍵を握っています。地形によって気候風土が変わります。中世以前の交易でどんな地域と付き合いがあったか。どんな作物が育ち、どんな動物や微生物がいるか。まず、地理を読み解きます。さらに北前船など海運も考えながら、文化を掘り起こして行きます。

―47都道府県を巡ったそうですが、事前に決めていた場所はどれくらいありますか。

半分くらいは決めていて、あと半分は行き当たりばったり。大阪の守口市や神奈川県の川崎大師、熊本県の阿蘇、宮城県の日南海岸などはアポを取らずに臨みました。

地図を見て「ここだろう」と検討をつけた場所の割烹料理屋の女将さんや、公民館のおばちゃん、屋台で甘酒を売るおばちゃんなどに聞き込みをして、人づてにローカルな発酵食品を見つけました。

十和田では、納豆と麹、乳酸菌を掛け合わせた究極の発酵レシピを見つけました。家庭で手作りしていた納豆がうまくいかなかった時に生まれた「ごど」というものです。強烈な味で、発酵の浅いものをご飯にかけたりして食べ、発酵が進んでドロドロに溶けたものは調味料として使います。

その土地の歴史を掘り起こすため、文献や建築など形あるものを考えがちじゃないですか。

僕にとっては、味覚という目に見えない記憶の伝達回路を見つけていく旅でした。

文=督あかり、写真=八尋伸

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