世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

音楽をサーブする──。置かれている場所の音響特性を自ら察知し、自動的に補正するバング&オルフセン「Beolab 50」。リスナーの最高の音空間をつくり出すさまは、同じく最高の音楽をサーブし続けてきた希代のプロデューサー・松任谷正隆にはどう映ったのか。


「この場所のアコースティック(音響)にしっくりくる音が鳴っているね。いい雰囲気だ」
 
一歩部屋に足を踏み入れただけで、音楽プロデューサー・松任谷正隆の耳が反応した。レコード、CD、ダウンロード、サブスクリプションと、主役が次々と入れ替わる音楽シーンで、常に第一線で音楽を創造し続けてきた松任谷。

その聴覚は、あらかじめ知らせていなかったにもかかわらず、音質の違いを瞬間で察知した。丸みを帯びたフォルム、微笑みのように穏やかに環境に溶け込む「Beolab 50」。しかしその内部には、先進の機能が潜んでいる。外部マイクを使用して、リスニングルームの音響特性を把握し、聴き手の位置に合わせて補正を行い、最高の音を生み出せるのだ。
 
どんなに優れたミュージシャンでもチューニングの狂った楽器では人々を感動させることはできない。同じようにどこに置かれているか、どこに聴き手の耳があるかを知って調整しなければ、最高の音は生み出せないと「Beolab 50」は知っている。
 
デイブ・グルーシンの流麗なエレクトリック・ピアノで綴られる「刑事バレッタのテーマ」(1976年)の旋律に、「昔、さんざん聴いたな」と目を細める松任谷。その目がオーク材のサイドパネルを備えた「Beolab 50」のフォルムをなぞっていく。

「見た目通りのクリーンな音がするね。温かい音。これはとても大切なこと。なぜなら、視覚も聴覚だから。同じ料理でも、きれいにサーブされると味は格段においしくなるでしょう? それと同じでデザインがクリーンでないと、いい音は生まれませんからね」
 
中学時代からオーディオシステムに心を奪われていた松任谷。しかし理想的な音響を求めるほど、部屋は居心地が悪くなっていくことにジレンマを抱いていた。でも、「少しレトロで古きよき時代のアメリカを連想させる『Beolab 50』のデザインであれば、そうしたことで悩む必要はない」と松任谷は言う。

「オーディオが部屋の雰囲気を壊してしまうのはよくあること。僕のもっている『Beoplay A8』も美しいからスタジオに置いてある。この『Beolab 50』なら、リビングに置いても気持ちよくいられる。音も聴き疲れしないから、目にも耳にもいい」
 
音楽家でもあり、熱心なリスナーでもある松任谷は、各々の立場で、スピーカーに求める音質は違うという。

「音楽制作時はHonestであることを心がけています。演奏して、出たままの音。決してきれいな音ではないけれど、演奏者の息遣いが聴こえるほどに、ありのままの音が聴こえるのが、よいスピーカーの定義。ただ一緒にやっているエンジニアのGOHHOTODAさんもそうだけれど、リスニング時はまったく違う特性のスピーカーで、好きな音で聴いている。音楽家はみんなそうですよ」


Beosound Edge
¥ 462,900(税別)。円形のシンプルなデザインが特徴的なワイヤレススピーカー。音量によって密閉型から開放型へと変化するなど新しい技術が採用されている。φ502×W 130mm、13 kg。「これもギスギスしない温かい音というのは共通しているね。このままドローンのように飛び立ってしまいそうなデザインもいい」(松任谷)


変化を追い続け、立ち止まらない

「僕が音楽家としてラッキーだったのは、新しいもの好きだったこと」と言う松任谷。中でも最大の難関は、かつて経験したデジタル化の波だったという。

「いまでも『昨晩お会いしましょう』(松任谷由実/81年)」の1曲目(タワー・サイド・メモリー)のイントロを聴くだけで、当時の気持ちがまざまざとよみがえってきます。当時のレコーディング環境は24ch。とても自分の理想のサウンドを構築するには足りないので、24chをひとまとめにして1chに入れて、また残りのチャンネルを使って録音していき、それを繰り返す方式をとっていました。ただどうしてもアナログの時代は劣化するのですね。ところがデジタルにすればいくらコピーしても劣化はなくなるというじゃないですか。もう僕にとっては、夢のような話ですよ。でもね、実際にやってみると同じにはならないのです。見た目も同じ、理屈も同じ、なのに何らかの音が違う。リバーブでもイコライザーでも調整できない差。まるでパラレルワールドに迷い込んだような状態で苦闘していました。でも、その時に抱いた、何かが違うという感覚、それを解決したいという衝動がなかったら、いままで音楽を続けられていなかったでしょうね」
 

Beolab 50
¥4,750,000(ペア、税別)。バング&オルフセンのフラッグシップモデル「Beolab 90」の血統を受け継いだアクティブ型のスピーカーシステム。外部マイクによりリスニングルームの音響特性を測定し、自動補正を行う「Active Room Compensation」機能や、試聴シーンに応じてトゥイーターの拡散を可動式音響レンズで制御する「Beam Width Control」機能を搭載。W45.5×H103.6×D45.5mm、61kg


変化があれば、それに対応し、乗り越えていく。新しいムーブメントにも、ものすごいスピードの音楽シーンの変化にも、立ち止まらない。制作側としては問題があったとしても、リスナーとして便利になるなら、それは正しい方向だと松任谷は考える。

「その形態が嫌ならば、より便利でよいものを考え出せばいいのです。変化はむしろ自分から求めていきたい。新しい時代の風を感じることが何よりも心地いい。クラシックカーよりも新型EVを選ぶ、そんな自分であり続けたいと思っています」
 
そしていま、CDにも新しい可能性が出てきたという。ハイレゾ音源が、CDに収録できるまでに技術が革新したからである。

「いま、ハイレゾ化の準備をしています。これによってさらに立体的で、ディテールまで聴こえる新しい音楽体験を、リスナーは得ることができるのです。映像の世界では4K、8Kと進化していますが、音楽もより解像度を高めることで見えてくる・聴こえてくるものがある。8Kだと女優の肌が細かいところまで映ってしまい、たいへんだといいますが、さまざまな技術でそんなことはクリアできるのです。音楽も同様のはず」
 
だから立ち止まったら終わりだと彼は考える。

「音楽はすべてにつながっています。服、クルマ、食事……。生活のおよそほとんどにかかわっているのです」
 
素敵なフォルム、寄り添う温かい音、そして飽くなき技術の追求。それらによって生活を彩ることがスピーカーの本当の役目なのかもしれない。


松任谷正隆◎1951年、東京都生まれ。4歳からピアノを習い始め、14歳のときにバンド活動を始める。71年、加藤和彦に誘われ、ミュージシャンデビュー。その後アレンジャー、プロデューサーとして、妻である松任谷由実を筆頭に、多くのアーティストの作品に携わる。86年に音楽学校「MICA MUSIC LABORATORY」を開校。

Promoted by バングアンドオルフセン / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

あなたにおすすめ