ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座

「アメリカで、世界に通用するスパークリング・ワインを造りたい」

ナパ・ヴァレーの北部、カリストガに拠点を置くシュラムスバーグ・ヴィンヤーズ(Schramsberg Vineyards)の原点だ。

ホワイトハウスが認めるワイン

その歴史は、カリフォルニアワインの黎明期にまで遡る。シュラムスバーグは1862年、ドイツ移民のヤコブ・シュラム氏により設立された、ナパで最も古いワイナリーの一つだ。

1965年にデイヴィズ夫妻がワイナリーを買い取り、シャンパーニュと同じ製法による、高品質なスパークリング・ワインの生産に着手した。アメリカで初めて、シャルドネとピノ・ノワールを使い、商業的にスパークリング・ワインを造る生産者だった。1965年は、後にワイナリーを継ぐことになる、息子のヒュー・デイヴィズ氏が生まれた年でもある。

現在も家族経営で、2005年からは、ワイン醸造の名門であるカリフォルニア大学デーヴィス校で修士を修めた2代目のヒューが、CEO兼醸造家として指揮を執っている。


2代目のヒュー・デイヴィズ(Hugh Davies)氏

シュラムスバーグの名が世に知れわたる転機となったのは、1972年、ニクソン大統領が訪中した時の周恩来首相との晩餐会で、その「ブランドブラン(Blanc de Blancs)」がサーヴされたことだ。自分たちのワインが使われることは知らされておらず、ニュースを聞いた友人からの電話で知り、驚いた。翌日から注文の電話が鳴り止まず、あっという間にワインは完売したと言う。

以来、歴代のアメリカ大統領による公式晩餐会で頻繁に供されており、「ホワイトハウスご用達のワイン」として、アメリカの政治の場に花を添える。最近では、2018年にトランプ大統領がマクロン仏大統領をもてなした晩餐会で供された。

好みや用途に合わせて選べる、様々なスタイルのスパークリング・ワイン

シャンドン(Chandon)やマム(Mumm)に代表されるように、カリフォルニアのスパークリング・ワイン生産者には、シャンパーニュ・メゾンからの資本で設立されたものが多いが、シュラムスバーグは、アメリカ・オリジナルの生産者として先頭を走る。価格帯も本場シャンパーニュに匹敵するほどで、プレミアム・ワインに注力する。醸造家チームが、定期的にシャンパーニュ地方など海外のワイン産地を訪問するなど、研究にも余念がない。


ナパ南部のカーネロス地区にある「トグネティ(Tognetti)」畑。長年の契約農家が、シュラムスバーグのシャルドネを栽培している。

温暖な気候で日照量が多いカリフォルニアのワイン産地で、冷涼な気候で生まれたシャンパーニュのようなワインを造るには、まずは、海に近い畑や標高が高い畑といった、涼しい生育条件の畑からのブドウを確保することが大事だ。収穫時期も、スティル・ワイン用のブドウよりだいぶ早く、ブドウに酸が保たれている間に収穫される。

シュラムスバーグでは、ナパのカーネロス地区、ソノマ・コースト、アンダーソン・ヴァレー、マリンなど、カリフォルニアのワイン産地の中でも、比較的冷涼な気候とされる地域からのブドウを使ってワインを造る。毎年、100以上の畑の区画から、約80のステンレス槽と300の樽で、ベースとなるワインを別々に醸造し、これらをそれぞれのキュヴェに合わせてブレンドする。


文=島 悠里

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