ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

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アメリカでの伝統的な商戦は、コカ・コーラ対ペプシコーラや、マック対ウインドウズなど、日本でもおなじみのものが多いが、多くは消費者の反応が漸減していって、アマゾン対グーグルのような新しい争いに話題を持っていかれる。

にもかかわらず、古くて長い戦いを今も続け、さらにエスカレートしているのは、ビール戦争だ。ご存知、バドワイザー対ミラークワーズの、まさにアメリカの味をかけた戦いが過熱し、このほど、ネガティブ広告キャンペーンから訴訟にまで発展した。

日本のように、ペットボトルや缶飲料での緑茶や紅茶類の消費がまだまだ低いアメリカでは、のどを潤すのは炭酸飲料水に加えてビールが圧倒的だ。ビールはハイネケンやコロナなど外国ブランドも含めて多くの種類が愛飲されているが、ダントツで飲まれているのはバドワイザー製品とミラークワーズ製品だ。

代表するビールは、前者ではバド・ライト(全ビールに対するマーケットシェア15.4%)、後者ではミラ―・ライト(同6.1%)とクワーズ・ライト(7.7%)となり、2つの会社の製品は拮抗している(マーケットシェアは2018年「USAトゥデイ」紙による)。

アメリカ人の生活に深く根ざした飲料

ビールという飲料は、アメリカの中流階級にとって深く生活に根差していて、たとえば、MLBでいうと、セントルイスはバドワイザーの本社工場があるところなので、カージナルズの試合ではバド・ライトが圧倒的に飲まれる。同様に、ミルウォーキーには、ミラーの本社工場があるので、ブリュワーズの試合はミラー・ライトが球場に溢れる。

セントルイスでバド・ライトを置いていないレストランを探すのは、ほぼ不可能だし、同地の居酒屋で、「ミラー・ライトをください」などと言おうものなら、確実に店内の客から白眼視される。ミルウォーキーでは逆も真なりだ。

今回、訴訟にまで発展したのは、2月3日に行われたアメリカンフットボールの最高峰を競うスーパーボウル、その中継で流されたテレビCMがきっかけだった。バド・ライトのメーカー、アンハイザー・ブッシュ社(以下ブッシュ社)が、ライバル社の商品であるミラー・ライトを揶揄しながら、CMでとりあげたのだ。

中世を思わせる城にコーンシロップの巨大な樽の届けものが来た。王様が、何故コーンシロップなどが届けられたのかと臣下に訊くと、「ビールづくりのためでしょう。ミラー・ライトの製造にはコーンシロップが必要ですから」と言う。王様は、「バド・ライトにはそんなものはいらない!」と言って、「ミラーの城にでも送ってやれ」と言ってうまそうに乾杯をするというCMだ。

国民の多くが体重制限に取り組むアメリカでは、「高カロリーなコーンシロップが入っていると聞くだけで、ミラー・ライトを敬遠するだろう」というネガティブキャンペーンを狙ったCMだ。これはYouTubeでも見られる。

30秒の放送で5億円以上のCM料をとる地球上最大のコマーシャル枠に、このCMを投じ、さらに、すかさずブッシュ社は高速道路のビルボードに、「ミラー・ライトがコーンシロップを使っている」と大きな文字で掲示し、繰り返して追い打ちをかけた。

文=長野慶太

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