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「網メッシュ目」型コングロマリットの中身

14年末、ルービンはブルックリンにコンセンシスの本社を据え、苛烈な速度で50ものスポークをスタートさせた。

コンセンシスの初期のスポークのなかには、暗号通貨の取引を処理する会計ソフトや、ブロックチェーンを基盤とするミュージシャン向けのデジタル著作権のプラットフォームなどが含まれていた。スポークのアイデアの大半は従業員から出された。いったんプロジェクトが承認されると、ルービンは25万〜50万ドルを与え、それらをスタートアップとして始動させた。

目標は、それぞれのスポークを自立したビジネスにすることだ。ルービンが目指したのは、イーサリアムを基盤とした「網目(メッシュ)」型の生態系を形作ること。スポーク相互の密な関係性が、生態系そのものの強さを補完していく仕組みだ。いまのところの稼ぎ頭は、企業向けにブロックチェーン技術の導入を支援するKaleido。彼らはシティ、BNPパリバを含む15の大手銀行の共同体Komgoの創設を支援した。

Komgoはブロックチェーンを利用し、原油のような世界中を行き交う商品の資金供給の効率化を試みている。フィリピンのユニオン・バンクの依頼による、送金のスピードアップのプロジェクトも進行中だ。アマゾンウェブサービスも1年ほど前、Kaleidoとの提携を発表している。そのほか顧客企業は1900社を数える。

17年中にKaleidoは30人から250人超へと拡大しており、キャッシュと株式の形で、何千万ドルもの利益を会社にもたらしている、とルービンは言う。

そのほか、会計ソフトBalanc3は、25社を超える企業顧客を獲得し、各社は年間2万5000ドル以上を払っているという。

Kaleidoを除くと、これまででコンセンシスの最大の成功は、イーサリアムのプログラマー向けのツール類だろう。ブラウザからイーサリアムへのログインを可能にするMetaMaskのプロダクトは、100万ダウンロード以上を記録してきた(すべて無料)。イーサリアム向けアプリの開発者たちがコードの管理やテストに使うTruffleも、無料ダウンロードが100万回を超えている。

共同体的であり、無政府主義的でもあるブロックチェーンの開発者たちの性格を考えれば、これらのツールに課金することは難しいかもしれない(ただし、イーサリアムへのアクセスを促進するInfuraというツールに対しては、間もなく課金を開始すると発表している)。

これまでのところ、コンセンシスのスポークのなかで、順調に事業化が進んでいるのは一握りだ。アプリと開発者向けツールを手がけるスポークに関しては、本誌の推定するところ、18年中の売り上げが1000万ドルを超えるものはわずかである。

17年に、カナダのウォータールー大学の学生マーク・ベイリンが、BountiesNetworkのアイデアを携えてルービンを訪ねてきた。これはフリーランス業務受託プラットフォームで、イーサリアムのスマート・コントラクト技術を利用するものだ。事業開始から1年が過ぎたが、担当メンバーは7人、プラットフォーム上の仕事のオファーは総計25万ドル。売り上げは5万ドルにも達していない。

16年10月には、ドバイに住む18歳のジャレッド・ペレイラが、ルービンにFathomのアイデアを売り込んだ。Fathomが目指すのは、クラウドソーシングによる成績評価を通じて、高等教育のビジネスを革命することだ。ルービンはゴーサインを出したが、2年を過ぎたいま、担当は6人しかおらず、公開できるプロトタイプもできていない。

Civilはジャーナリズムをブロックチェーン上に乗せることを目的とし、何らかの形でニュースの信頼性を増すものと期待されているスポークだ。しかし最近、ICOを中止せざるを得なくなった。目標の下限の800万ドルを調達できなかったためだ。Civilのジャーナリストの一部は、約束されたトークンをまだ受け取っていないと話す。

「コンセンシスはイーサリアムの生態系が発展していく最初の5年間に、他のどの会社よりも多くのことを行った」と、暗号通貨の管理会社コインシェアーズの最高戦略責任者メルテン・デミロース は言う。

しかし、ルービンは利益を出すためのプロジェクトを始動できていないように見える。「目的は会社を作って金を稼ぐことじゃない」と、彼は言う。「目指すはひとつの生態系を作りだすことなんだ。とても家族的なものをね」。

文=ジェフ・カフリン、サラ・ハンセン 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

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