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昔からのエンジン音を愛する守旧派(?)のクルマ好きにとって、ジュネーブショーの内容は落胆的なものだったのか。というと、必ずしもそうでもないだろう。EVのスーパースポーツも数多く出展されたからだ。

「いま世界が変わりつつあり、(クルマのありかたを)熟慮し、再考し、新しい軌道に載せる時期なのです」

そう述べるのは、「ピエヒ・マークゼロ」という、EVのスポーツカーコンセプトを発表した「ピエヒ・オートモーティブ」だ。同社の共同設立者の一人は、名字が社名になっているトニ・ピエヒである。


ピエヒ・オートモーティブ「マークゼロ」はあえて昔ふうのスタイリッシュなルックスを採用したEVスポーツ

トニ・ピエヒは、ポルシェの創設者であるフェルディナント・ポルシェのひ孫であり、VWとアウディに監査役会会長として君臨したフェルディナント・ピエヒの息子だ。

エンジンという巨額な開発費がかかり、しかも欧州においては余命がいくばくもないようなパワートレインの“呪縛”から解放されることは、ピエヒのようなベンチャー企業にとって福音なのだろう。

同様の例が、「アウトモビリ・ピニンファリーナ」だ。創業者のファーストネームを持った「バティスタ」という限定生産のEVハイパースポーツカーをジュネーブショーに展示したのである。


アウトモビリ・ピニンファリーナが150台限定生産を予定している「バティスタ」

電気モーターの力で1900馬力の最高出力と2300Nmの最大トルクを発表するという。従来の常識からすると、ひとケタ数字が大きすぎるように思えるほどだ。静止から時速100キロまでを3秒で加速するという。

中国からも、北京汽車傘下の「アークフォクス」ブランドのEVスポーツカーが出展されるなど、このセグメントはおおいに賑わいを見せていた。


中国のアークフォックス「GT」のスタイリングは、もとVWデザインを統括したワルター・デシルバの作

EVに問題があるとしたら価格が従来の内燃機関より高くなりがちということか。ホンダのコンパクトEVを例にとると、「価格が300万円を超えてしまう」(開発を指揮した本田技研の四輪R&Dセンターの人見康平氏)という。

価格の面では高級スポーツカーなどと相性がいいEV。いっぽうで、ベンチャー企業に道を開くことで、業界の活性化も期待できる。これからも市場は過熱していきそうだ。2019年のジュネーブショーの展示内容はそれを雄弁に物語っていた。

文=小川フミオ 編集=青山鼓

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